本研究では、側弯症に対する外科的治療の侵襲を低減する方法について計算機シミュレーションを援用して検討し、十分な矯正効果を得る低侵襲な手術手法を提案することを目的としている。最終年度となる本年度には、これまでの研究成果の取りまとめとして以下の3項目について検討を実施した。 [1] 側弯症の矯正固定術後に側弯が増悪する現象に対して画像分析を行った。その結果、多くの患者において固定範囲に隣接する椎間の変形が最も大きくなっており、それらの患者に対してはより広い範囲で固定することが必要であることが示唆された。この結果について学会発表を行った。 [2] 本研究が目指す低侵襲な脊椎矯正固定術の方法として有用と考えられる凸側後方固定術について、計算機シミュレーション(応力解析)を行い、従来手法との比較を行った。その結果、提案手法は従来手法よりも矯正効果が大きく、より重篤な側弯症に対しても適用可能であることが示唆された。 [3] 本研究でこれまでに取り組んだの解析結果の妥当性を確認するための実験に用いる脊椎模型の改良を行った。手術後に椎弓根スクリューが緩んだり抜けたりする現象に注目し、スクリュー先端にロードセルを配した脊椎モデルを構築し、実際の手術と同じ手順で椎骨間を固定した際のスクリュー引き抜け力の計測を行った。その結果、スクリューとロッドの固定順序や、スクリューが右ねじであることが引き抜け力に影響を与えることが明らかとなり、脊椎の弯曲方向によってスクリューの締結順序を調整することが望ましいことが示唆された。 本研究の総括として、側弯症に対する手術手法に対して解析的手法と実験的手法を組み合わせて検討を行い、低侵襲かつ効果的な手術手法について有用な知見が得られたと考えられる。
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