研究課題
生体運動や臓器活動、さらには外部環境からの力学負荷などにより生体内の組織は絶えず変形を受けている。変形を受けた組織では、変形の様態に応じて細胞増殖や細胞死、細胞排除が誘導されることで、細胞数がコントロールされている。上皮組織が伸展される場合、組織中の上皮細胞は伸展による力学刺激を主に「細胞外基質との接着構造」および「隣接細胞との接着構造」を介して受けると考えられる。本研究では、伸展された上皮組織において、「細胞外基質との接着構造」である焦点接着斑と「隣接細胞との接着構造」であるアドヘレンスジャンクション(AJ)それぞれが細胞増殖の制御におよぼす役割を明らかにすることを目標としている。昨年度までの研究によって、上皮単層中の細胞増殖は組織の一軸伸展変形によって特に変化をしないものの、これは焦点接着斑におけるFAKを介した増殖促進シグナルの亢進と、AJへの引張刺激に依存した増殖抑制効果とが拮抗するためであることを明らかにすることができた。最終年度では、昨年度までの結果をさらに定量的に検証するため、AJにかかる引張力の可視化・定量を試みた。上皮細胞のAJにおける細胞間接着分子であるE-カドヘリンについて、その張力状態を可視化定量するツールとして、E-カドヘリンの細胞質ドメインにクモ糸タンパク質由来の弾性ペプチドを挿入したFRET張力センサープローブが開発・報告されている。このE-カドヘリン張力センサーをヒト上皮細胞に恒常的に発現させFRET測定を行った。しかしながら本研究では、E-カドヘリン張力センサーのFRET効率と、変異型E-カドヘリンのネガティブコントロールセンサーのFRET効率との間に、特に差がみられなかった。現在、共同研究によって、FRET応答性を向上させた改良型のE-カドヘリン張力センサーを開発中である。
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iScience
巻: 26 ページ: 106090~106090
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Frontiers in Cell and Developmental Biology
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