研究課題/領域番号 |
20K12600
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福見 稔 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (80199265)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 手首筋電 / データ増量 / 深層学習 / 筋シナジー |
研究実績の概要 |
本研究では、少数の筋電信号からデータ個数を効率的に増加させてその良否を評価する(データの価値を高める)方法と筋シナジーに基づいて深層学習ニューラルネットワーク(以後,NNと略記)から人間が理解(許容)できるルール生成法を研究開発する。そのために、令和2年度(2020年度)は、対象とする深層学習NNの構造は、入力層-畳み込み層を数層-全結合層-出力層として実装した。NNへの入力信号は時系列の筋電信号で検討した。 入力層で学習データにガウス乱数を掛け合わせ、データ数を1,000倍程度に増加させ、その価値(有用度)を中間層付近の抽象化された空間で評価した。そのために、まず当初の学習データだけで深層学習を行い、学習後に中間層付近で主成分分析を実施した。その後、新たに生成した学習データを入力し、中間層付近での主成分分析の空間に射影し、当初の学習データとの分布関係の距離で有用性を評価し、閾値以下のデータを学習に用いる方法を開発した。中間層付近の位置は、最後の畳み込み層の出力とした。 学習データを増量させて、しきい値以下のデータを用いて学習させたところ、認識精度を改善させる効果があることが分かった。しきい値の値を変更させることにより精度も変化するため、このしきい値を効果的に決める方法を開発する必要がある。また、深層学習ネットワークのどの位置でデータの価値を評価するかで精度が変化すると思われるため、この位置を探索することも必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、令和2年度(2020年度)に、入力層で学習データにガウス乱数を掛け合わせ、データ数を1,000倍程度に増加させ、その価値(有用度)を中間層付近の抽象化された空間で評価することが目的であった。そのために、まず当初の学習データだけで深層学習を行い、学習後に中間層付近で主成分分析、判別分析、その他の非線形手法等で評価する仕組みを開発する必要があった。 しかし、新型コロナウィルス感染症による様々な制約があり、主成分分析によるデータ価値の評価を行うだけに止まった。ただ、精度改善効果があることは明確となったので、今後もこの方針を継続して精度改善に繋げたい。その他にも、別の種類の深層学習ネットワークによるデータ増量法も検討していたが、まだ十分な成果を得られていない。一方、成果を発表する予定の国内学会、国際会議が中止または延期となり、研究成果の発表をすることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、令和2年度(2020年度)に、入力層で学習データにガウス乱数を掛け合わせ、データ数を1,000倍程度に増加させ、その価値(有用度)を中間層付近の抽象化された空間で評価することが目的であった。しかし、学習後に中間層付近で主成分分析で評価する仕組みを開発するだけに止まった。他の方法も開発し、成果を検証中であったが、十分な成果を得られていない。今後、これらの方針を継続し、精度改善効果を検証していく予定である。 また今後の方針として、ルール生成を実現することを目指す。そのため、入力層でのデータと筋シナジー層の各ユニットとの関係性、筋シナジー層のユニットと出力層ユニットとの関係性の2段階構成とする。また、各筋シナジーユニットは指の単純動作を表現するものと考え、最初は各指(親指、人差し指、中指、薬指と小指のペアの4種類)の屈曲動作に対応するように学習させる。指動作を学習する際は、各筋シナジーが独立となるように筋シナジー層には出力層とは別の教師信号を与える。さらに、生成されたルールの根拠を筋シナジーと入力信号との関係性で説明できる仕組みを構築するために、筋シナジーと密接に関連する入力信号(属性)を勾配に基づいて推定できる深層学習技術のGrad-CAM(Class Activation Map)やSHAPなどを使用する。そして筋シナジーと最も密接に関連する少数の入力信号(属性)により各筋シナジーの動作を説明する仕組みを開発する。筋シナジー層から出力層までの間のルール生成は申請者の提案している方法を用いる。そして、これらの2段階の結果を統合してルール表現とする方法の開発を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度(2020年度)は,新型コロナ感染症の影響で、発表を予定していた国内学会と国際会議が中止または延期となり、発表できずに終わり、出張費用が多く残った。また、学生の登校禁止期間が度々あり、学生に研究協力を依頼することができなかった。令和3年度(2021年度)は、発表できる国内学会および国際会議を選別し、オンライン開催であっても積極的に発表を行う予定である。また、深層学習に利用できるGPU付き計算機を購入予定である。
|