研究課題
消化器組織などの生体組織には、ラベルフリーイメージング可能な自家蛍光物質等の様々な生体分子が含まれる。研究代表者は自家蛍光物質に着目し大腸腫瘍を描出可能な2波長励起ラベルフリーイメージング法を開発した(Imaizumi et al.Gastrointest Endosc 2012, Miyawaki et al. Acta Histochem Cytochem 2014)。同法は、粘膜上皮細胞に豊富に含まれる還元型NADHを背景蛍光から分離して検出し、粘膜上皮の腫瘍化を選択的に描出できる手法である。本研究では、情報科学的手法を用いて新たなラベルフリーイメージング法の基礎技術を開発する。非染色の生体組織においては自家蛍光とともにラマン光も同時に検出可能なため、ラマン光による消化器疾患イメージングに着目し研究を行った。本年度はラット消化器組織(肝組織)の画像を主に解析した。腫瘍の発生母地となりうる非アルコール性脂肪性肝疾患の組織学的診断は、異常な組織形態の出現に依存しており、従来の病理組織学的アプローチで組織の生体分子環境をセグメントすることは困難である。ここでは、ハイパースペクトルイメージを情報科学的手法により解析し、組織学的特徴が現れる前に病態間のスペクトル変化を検出可能なことを示した。多様体学習アルゴリズムを用いて、高次元のスペクトルデータの根底にある構造をより少ない次元で可視化することで、異なる組織状態の生体分子特性を捉えることが可能であった。本研究結果より、消化器疾患のラベルフリー評価が有望な可能性が示唆された。
3: やや遅れている
研究計画を部分的に見直したため、進捗状況がやや遅れている。しかし、部分的に見直すことで論文発表を行った。
本研究課題の推進方策として、高感度ラベルフリー顕微鏡イメージングシステムを用いることにより、消化器疾患のラベルフリー評価の有望な可能性を示すことができた。次年度も本手法を用いて他疾患評価の可能性を模索する。
研究計画変更に伴い、補助事業期間を延長したため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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