研究課題
消化器組織などの生体組織には、自家蛍光イメージングなどのラベルフリーイメージングに適した代謝関連分子(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドなど)が含まれている。本研究では、大腸腫瘍の描出が可能な2波長励起自家蛍光イメージング法の開発で取得した知見を基に、情報科学的手法を活用して新たなラベルフリーイメージング法の基礎技術を開発した。特に、非染色の生体組織では自家蛍光とともにラマン光も同時に検出できるため、消化器疾患のラマン光イメージングに着目した。昨年度に引き続き、ラットの消化器組織(特にMAFLD(Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease)肝組織)のラベルフリー画像の取得と解析を行った。MAFLDの組織学的診断は異常な組織形態の出現に依存しているが、本開発手法では、MAFLDを示す明らかな組織形態学的特徴が現れる前の状態で病態間のスペクトル変化を鋭敏に検出可能であった。この知見は、ラベルフリーイメージングが病理組織学者にとって有用なツールであることを示し、シンポジウム等での研究発表につながった。研究期間全体を通じて、生体組織からのマイクロメーターオーダーの高次元スペクトル画像を取得し、機械学習などの手法を用いて解析を行った。研究計画の部分的な見直しを行うことで、標準的な組織病理学的手段では観察が困難な生体分子のラベルフリー組織判別が可能となった。本研究で示されたラベルフリー分子イメージング技術は病態進行に伴う代謝関連分子の違いを画像化しており、微小腫瘍の検出などヒトへの応用も見込まれる。その応用性は非常に高いと考えられる。
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FEBS Lett
巻: 597 ページ: 1517-1527
10.1002/1873-3468.14600