研究課題/領域番号 |
20K12609
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
渡邉 宣夫 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (00568644)
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研究分担者 |
福井 浩二 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80399807)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血小板凝集能 / せん断負荷 / 血液損傷 / 心血管デバイス / 赤血球変形能 |
研究実績の概要 |
豪州グリフィス大学Chris Chan博士らとの血小板および血漿タンパクvWFのせん断負荷に対する応答性に関する共同研究の成果として、血小板凝集挙動を直接申請者のせん断装置を用いて撮影および画像解析評価した結果、せん断速度3000[1/s]あたりに血小板凝集のピークが損害する事を発見した。この成果を学術論文としてまとめた内容が、2020年7月にArtificial Organs誌に採択された。さらに高せん断応力下にさらされた赤血球の変形流動挙動に対する直接撮影した結果から、0から60Paのせん断環境にさらされた赤血球の形状について検証した結果、大部分の赤血球は依然としてその変形能を維持する結果と、さらに一部の赤血球において異常形状が生じる事が確認した。これらの結果について考察した結果、従来の光回折像を用いる事で明らかとなった高せん断環境における赤血球変形能低下現象については、一部の赤血球が損傷する事が、大きく実験データに影響を及ぼした可能性が示唆された。現在、これらの研究成果を豪州共同研究者らと共に定期的なOnlineミーティングを通じて、学術論文化している所であり、まとまり次第、投稿する計画である。この論文投稿に加えて、2021年7月に開催の国際バイオレオロジー学会にて報告予定である。その他、赤血球膜の酸化度についての実験は共同研究者の福井先生と共に引き続き実験を重ねて学術論文化する予定である。独国ChariteのBiofluid Mechanics 研究室Kertzscher先生のチームおよび豪州の研究チームとの共同研究の一環での人材交流については、COVID-19の拡大防止対策の一環で現在延期している。ワクチン接種などの対策を取った後で2021年度に再開予定である。国際交流再開の時期までには、研究成果の学術論文化およびせん断負荷発生装置の改良を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で豪州研究者および独国研究者を直接訪問の上での共同実験ができなかった状況である。加えて、研究に協力してくれる予定の申請者研究室所属修士課程学生の留学についても出発を延期している状況であるため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響が依然として大きく海外の共同研究者に対しての直接訪問を伴う共同実験が叶わない場合、オンラインで共同研究ディスカッションを実施しつつ計画を遂行する。更に申請者研究室において、せん断負荷をメンテナンスおよび改良し、その妥当性を検証する。せん断装置の改良ポイントとして、より鮮明な血液細胞観察を可能にできるよう回転円錐部位を改良予定である。加えて、回転によりせん断が発生可能な仕組みであるこの装置の回転制御方法、および生体内を想定した温度での実験方法についても検討する。改良後に装置の妥当性実験を行った上で、その改良した装置を用いて、血液細胞に対して直接可視化実験を行い、健康な範囲の赤血球の変形能のばらつき分布を定量評価する。更に、赤血球の高せん断における損傷現象をせん断応力と暴露時間を関数として定量評価する。加えて、福井教授と協力しせん断暴露時の赤血球膜タンパクの酸化度と損傷現象や変形能低下現象との関連性を検証する。更に、赤血球形状に対する画像解析的手法を用いた損傷現象の同定方法の構築を試みる。更に、大量可視化データに対する解析を行い、損傷現象の出現率を定量化する事で、異なる変形能が混在する赤血球の損傷現象の詳細を明らかにする。新型コロナウイルスの影響がなくなり渡航が許可された場合においては、申請者研究室修士学生板谷君が独国Charite研究所にせん断装置を持って留学し、現地メンバーと協力し計算流体力学的に見積もられた人工臓器内容にて発生するせん断環境下を申請者のせん断装置を用いて再現した環境において、血小板凝集挙動を観察し、血小板活性と血栓発生機序との関係を明らかにする予定である。加えて、豪州研究者と協力し申請者のせん断装置を用いて変動せん断を発生させ、赤血球のNO産生能および変形能でみた赤血球損傷についての理解を更に深める共同実験を申請者が直接訪問し実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は豪州のブリスベーン・プリンスチャールズ病院救命救急研究所John Fraser教授ならびにゴールドコースト・グリフィス大学医学部バイオレオロジー研究室Michael Simmonds博士らの豪州研究チーム、加えて、独国ベルリン・シャリテ病院・バイオ流体メカニクス研究室Ulrich Kerzscher博士を直接訪問しての共同研究・共同実験をする事を内容に盛り込んでいる。それらの渡航には、申請者研究室大学院生の参加も予定している。具体的に説明すると、豪州研究チームと共に行う実験には、申請者研究室博士学生のKriengsak Masnok君が申請者と共に協力予定である。加えて、独国シャリテ病院研究室での研究においては、申請者研究室所属の修士課程学生の板谷君がトビタテのプロジェクトを利用しての研究留学制度を利用して、本共同研究プロジェクトに協力してもらう事になっている。これらの直接訪問しての共同研究の為に必要であった申請者の出張旅費・実験に必要な消耗品購入費は、新型コロナウイルスの影響が鎮静化するまで節約し、渡航が許可されるタイミングにて本研究プロジェクトの成功の為、的確に使用する予定である。この為、次年度の使用額が生じる結果となった。
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