研究課題/領域番号 |
20K12613
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高山 祐三 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ付 (60608438)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自律神経 / 心筋 / ヒトiPS細胞 |
研究実績の概要 |
ヒト細胞を用いた創薬の課題は、培養環境下において生体内の臓器間相互作用等の環境を再現することにある。本研究ではiPS細胞等のヒト多能性幹細胞から自律神経と心筋細胞を作製し、それらを共培養したモデルを構築することで、自律神経シグナル変化による心筋機能への影響を評価可能な実験システムを構築することを目指している。 昨年度までに行ったヒトiPS細胞からの自律神経スフェア誘導のための浮遊培養プロトコルでは自律神経誘導に一定の効果があったものの、スフェア内には多数のシュワン細胞が含有されるなどの課題が存在した。 これを踏まえて、本年度では自律神経スフェアの更なる効率的な誘導法を開発することを目的として、誘導プロトコルの更なる検討を行った。その結果、自律神経誘導後の神経成熟期間において、これまでの誘導プロトコルにcompound X (特許出願を見据えているため詳細を伏せる)を培地に添加した状態での誘導方法を開発するに至った。更に、このcompound Xを添加させる期間についても最適化を行い、ヒトiPS細胞から自律神経誘導後、神経成熟期間に移行した段階からの最初の1週間のみに添加することにより、自律神経マーカーであるPHOX2BやTH, DBH, CHAT等の顕著な発現上昇を確認することができた。こうした分化方向性はRNA-seqによる網羅的遺伝子解析手法によっても解析することが出来た。 こうした作製した自律神経スフェアを用いて、今後は実際にヒト心筋細胞との共培養と薬理操作による機能性を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の中での出勤制限やサプライチェーンへの影響の中で予算執行計画には一部影響があったものの、自律神経スフェア作製の新規protocolの開発に至るなど、成果としては順調に得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度において、該当年度に作製した自律神経スフェアを心筋組織との共培養系構築を行い、催不整脈作用が知られている薬品による影響の解析を行う。共培養した自律神経-心筋組織の機能解析にはカルシウメイメージングや微小電極アレイ基板システム (MEA)を用いた電気活動計測を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ流行による出勤制限やサプライチェーンへの影響、及び研究補助者の業務変更により当初予定していた計画に変更があり、結果的に予算に余剰が生じた。 最終年度は自律神経スフェアと心筋細胞の共培養系に注力する予定のため、心筋組織の購入や細胞培養試薬等に重点的に使用する予定である。
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備考 |
研究者HP https://sites.google.com/site/yuzotaka0124/
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