本研究では(1)撮影法と抽出法の改良による映像脈波の精度向上と瞬時心拍数の算出精度の向上,(2)体位変化を積極的に利用した血圧と血管特性の推定,(3)複数点への伝播モデルを仮定した血管特性の評価指標の提案,を目的として実施した。 (1)では,映像脈波の抽出において,周期成分分析(PiCA)を繰り返し適用して得られた心拍間隔データを複数回更新して映像脈波を算出する新たな方法を提案できた。検証結果では従来法よりも映像脈波の精度向上が実現でき,映像脈波を瞬時心拍数や加速度脈波の解析に応用できることが示された。また,偏光を利用した反射波除去について,可視光および赤外光双方でその有効性が確認できたが,可視光については環境光の影響についての課題も残された。 (2)では,手の昇降時の血行動態の変化を利用したカフレス血圧推定法を提案した。接触式のセンサを用いた検証では、特に拡張期血圧で高い推定精度での推定が可能であった。さらに,本手法を映像脈波を用いた方法で検証を行った結果,接触式には至らないものの平均10mmHg以下の誤差で血圧が推定できたことから,完全非接触で血圧を推定できる可能性が示された。本方法について特許を出願した。 (3)では,BSSによる血行動態指標の算出法について,顔を対象として検討を行ったところ,一部の結果で,マッサージによる血行動態の変化,体位変化による顔のうっ血の度合いの差についての情報を得られる可能性が示された。一方で血行動態のモデル同定では,ROIの設定方法,ノイズや体動などの計測環境などがパラメータ推定の精度に大きく影響することから,被写体の固定やライティングなどに制限があることも明らかとなった。
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