研究課題/領域番号 |
20K12619
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田渕 圭章 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20322109)
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研究分担者 |
長谷川 英之 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (00344698)
鈴木 信雄 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (60242476)
古澤 之裕 富山県立大学, 工学部, 准教授 (80632306)
平山 順 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (90510363)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超音波 / 遺伝子発現 / 熱作用 |
研究実績の概要 |
低出力パルス超音波 (LIPUS) は,臨床で骨折治療の補助療法として用いられている.しかしながら,この安全で有効なLIPUSの作用の分子メカニズムは不明な点が多い. 超音波照射器 (SCI-p1-35, MU研究所) を用いて,シャーレの下面からLIPUSを20分間照射した (超音波周波数: 1.11 MHz, DF: 20%,パルス繰り返し周波数: 1 kHz, 印加電圧: 14 Vpp).ハイドロフォンを用いた計測により,用いたLIPUSの音圧は25 mW/cm2であった.マウス骨髄間質細胞ST2へのLIPUS照射後の遺伝子発現変化を網羅的に解析した.LIPUS照射の30分後より,数多くの遺伝子の発現が変動 (2倍) することが示された.発現が増加する遺伝子群には,最初期遺伝子のメンバーであるFos やEgr1が含まれ,興味深いことに,これらの遺伝子を有する骨の機能に関与する遺伝子ネットワークを構築することができた.他方,細胞保護作用やアポトーシス抑制作用に関与する遺伝子ネットワークが得られた.このネットワークには,Hspa1やBag3等,シャペロン機能を有する熱ショックタンパク質関連遺伝子が数多く存在した.LIPUS照射により細胞培養液の温度が35℃から38℃に上昇した.熱ショック転写因子HSF1は40℃から42℃の温熱負荷 (20分) により顕著に活性化されたが,38や39℃ではその活性化は観察されなかった.一方,詳細なメカニズムは不明であるがLIPUSによりHSF1が活性化された.今後,これらの遺伝子発現とmiRNA発現との間の関連を明らかにすることが今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は,マウス骨髄間質細胞において低出力パルス超音波 (LIPUS) に応答する遺伝子を網羅的に解析した.LIPUSの遺伝子応答やLIPUSの効果における熱作用の関与について,新しい知見を得ることができた.以上より,研究は概ね良好に進捗したと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
未分化骨芽細胞,多分化能を有する間葉系幹細胞や種々の上皮細胞を用いて,低出力パルス超音波 (LIPUS) の細胞分化や増殖に対する効果を再確認する.培養上清に存在するエクソソームを分離し,存在するmiRNAを同定する.エクソソーム量やmiRNA発現レベルに対するLIPUSの効果を検討する.また,骨の有用なモデルである金魚のウロコ を用いて,細胞から放出されるエクソソームについて詳細に解析する. 予定通り予算を執行し,繰越金は発生しなかった.次年度の研究を実施するために以下の使用を計画している.試薬類:400千円.培養器具類:100千円.抗体類:200千円.網羅的miRNA発現解析試薬類:500千円.国内旅費:50千円.人件費・謝金:150千円.(千円)
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の若干の残金が生じた(約10万円).令和3年度に消耗品費として使用する予定である.
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