ユーザの両耳に提示した音刺激を用いて,聴覚VR(仮想現実感)手法によりユーザに空間的な広がり(聴空間)を知覚させ,生じた脳波からユーザの意図を検出するBCI「聴空間BCI」を開発するために,2021年度に引き続き,以下の研究を行った. (1)聴空間のVR知覚を可能とする刺激提示方法の検討:頭部伝達関数(HRTF)を用いて音像の頭外定位を行う方法で音像定位性能を向上できた.仮想聴空間上に音を反射する障害物を設置する方法,被験者の前部と後部から仮想提示される音に属性の違い(周波数,音色など)を付与する方法により,BCIでの使用の際に求められる音像定位性能の向上が可能であることが示された. (2)仮想定位された音の検出能力の検討:仮想定位された音を聴空間内で移動させ,それに対して選択的注意を行うことを被験者に求め,事象関連電位の計測実験を実施した.仮想定位された音の属性(周波数,強度)の変化や,聴空間内を移動する音の移動方向の変化に伴い誘導される事象関連電位を機械学習によって分類し,その性能を評価した.その結果,音属性の変化,移動音の方向変化のそれぞれで,良好な分類成績を得ることができた. (3)多チャンネルスピーカアレイを用いた音像提示と事象関連電位計測実験の実施:多チャンネルスピーカアレイを用いて,実音源,および隣接する実音源の中間に仮想定位される音源(仮想音源)それぞれからの音の出現に伴う事象関連電位計測実験を実施した.その結果,実音,仮想定位音の出現によって事象関連電位が誘導され,機械学習によるパターン分類が可能であることが示された.また,これらの音の音源を,被験者からみて左右方向の1次元軸上だけでなく,上下左右方向の2次元空間上に配置した場合でも分類能力は高いことが示された.
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