研究課題/領域番号 |
20K12630
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
王 作軍 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10758080)
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研究分担者 |
中田 典生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (80237297)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん / 超音波造影法 / マイクロバブル |
研究実績の概要 |
がんに対する選択的超音波造影法を探すため、EPR(増強されたがん間質への透過及び保持)効果の利用を睨んで、多種多様なナノサイズの相変化液滴(PCD)を用いたin vitro及び動物実験が行われてきた。しかし、臨床応用が安全かつ有効な方法は未だに見つけられていない。EPR効果を実現するためのPCDサイズは5~200nmであるが、申請者が推定した有効かつ安全な超音波造影を実現するためのPCDサイズは>300nmである。申請者は、がんの血流及び血管網が特殊で、PCDの相変化で生じたマイクロバブル(MB)を長く保持する作用(EVR効果)があるという、EPR効果と異なる新しい原理を提言し、新しい選択的超音波造影法を開発しようと考えている。新原理を利用した造影法でのPCDのサイズ選定において、ある程度大きいPCDのほうが相変化しやすく、その相変化で生じたMBもサイズが大きいから異常な腫瘍血管網の中に保持されやすいため、より安全かつ有効な、がんの選択的超音波造影法が実現されやすい。 今までのがんの標的造影法は、主にEPR効果を狙ってきたが、それは、主に腫瘍の微小血管外の間質への薬の透過及び保持能力の増強であるが、申請者は、腫瘍の微小血管自身の薬の保持能力の増強効果を利用する。 2020年度は、延長になってしまった別の課題の完成に大量の時間が掛かったため、本研究の起動が大変遅れてしまって、多種サイズのPCDの前駆体MBの作成の準備だけを実施した。 今後は、まずEVR効果を利用する、安全な診断用超音波でも相変化が可能な、多種サイズのPCDの作成に取り組み、それと同時にPCDの血液中の相変化閾値のin vitro研究用モデルの作製も進む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
期限延長になってしまった別の研究課題の完成に大量の時間が掛かったため、本研究の起動は遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず以下の実験を実施する。 (1)多種サイズのPCDの前駆体MBの作成:Sheeranらの方法5)を参考に、リン脂質(DSPC:DSPE2000=9:1)をPBSとプロピレングリコールとグリセロールの(16:3:1)の混合液で溶ける(終濃度1mg/ml)。得られた溶液を3mlバイルに1.5mlずつ注入し、それらのヘッドスペースをdecafluorobutane (DFB, 沸点-1.7℃)又はそれとoctafluoropropane (OFP, 沸点-36.7℃)の各種比例の混合物で置換した後、バイルミクスで攪拌し、MBを作成する。続いて、作ったMBを遠心分離法で、平均粒径約1~8μm範囲内の多種サイズの前駆体MBに分離する。 (2)前駆体MBから多種サイズのPCDへの凝縮:各サイズの前駆体MB溶液1.5mlを3mlのバイルに入れ、-5℃~-10℃に維持されたドライアイス/イソプロパノール冷却バスに浸け、ぐるぐる回って1分間後、そのヘッドスペースを高圧空気源と接続する。予定の圧力で加圧し、約1分間でMBからPCDへ凝縮させる5)。作った各種PCDのサイズは動的光散乱法で測定する。 (3)各種PCDの室温及び体温条件下での安定性の検討:PCD溶液を3mlのシリンジへ移し、ヘッドスペースなしの状況でキャップした後、室温(22℃)又は体温(37℃)に暴露する。10分ごとに10μlを取り出し、細胞計数盤に入れ、光学顕微鏡法でPCD から転換されたMBの有無及び数量を検測し、各種PCDの安定性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、期限延長になってしまった別の研究課題を完成させるため、時間が大変掛かってしまって、本研究の起動が遅くなりました。
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