研究課題/領域番号 |
20K12631
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山本 隆彦 東京理科大学, 理工学部電気電子情報工学科, 准教授 (50579761)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工心臓 / 経皮エネルギー伝送 / 経皮情報伝送 / 模擬生体 |
研究実績の概要 |
本研究は、健康長寿社会を見据え、重症心不全患者への長期治療手段として近年数多く販売された埋込型人工心臓を真に実用的にするシステムとして、非接触に電力および情報を伝送する装置の研究開発、さらにこれらを動物実験を行うことなく実際の環境に近い状態で性能評価を行うための模擬生体の研究開発を行うものである。 今年度は特に体内側経皮トランスフォーマに対して2つの導線を同内外径で巻いた2線アルキメデス螺旋コイルを適用することで、体内回路の主な電力損失の原因となる整流部品の数を低減した。また電力伝送効率の改善を目的とした体外回路としてプッシュプル化したE級増幅器を検討し、電力伝送効率と負荷変動特性および入力電源電圧特性を評価した。また、模擬生体の研究開発においては電磁ノイズに関する評価試験の一つである電源端子妨害波電圧測定試験で必要な周波数帯域において生体の電気的特性を模擬するファントムの検討を行った。電気的特性の改善にあたっては、従来用いていたカービンフィラーに導電性酸化チタンを用いて模擬可能周波数帯域の拡大を試み、その有用性を明らかにした。 これらの研究を行う背景に、ポンプシステムなどが大きく改良されている一方で、未だに駆動用の電力やデバイス制御のための情報通信は皮膚貫通部を設けケーブルを用いて直接的に行っている現状がある。このため、患者は常に感染症リスクに曝されているためである。これらの問題を根本的に解決する手段として本研究は意義深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経皮エネルギー伝送システムの開発においては、2線アルキメデス螺旋コイルを体内トランスフォーマに用いること提案した。その結果、部品数の低減による体内回路の小型化、高電力伝送効率化を体内回路で、結合係数の改善をトランスフォーマで、入力電源電圧と負荷変動に対して体内側での供給電力の安定化することがシミュレーションではあるものの確認できた。 また、模擬生体の開発にあたっては、開発したファントムの対象周波数帯における平均誤差は比誘電率で19.8%,導電率で-2.18%であり,最大誤差は比誘電率では14 MHzにおいて49.9%,導電率では0.89 MHzにおいて-7.73%であった.また,試作ファントムの電気的特性のばらつきを場所ごと,試作ごとにそれぞれ算出した結果,その変動係数はともに7%未満であった.本試作ファントムは1週間電気的特性を10%未満の変動で維持可能であることを確認した.以上の結果から,平均誤差,最大誤差ともに先行研究から大きく改善し,長期的に使用可能な広帯域なファントムを開発することができた.
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今後の研究の推進方策 |
経皮エネルギー伝送システムの研究開発においては、シミュレーションによって提案に留まった。最終年度に装置の試作を行い、トータルシステムとしての有用性を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開発の一部にシミュレーションを導入したことが挙げられる。これによって、低コストかつ詳細な検討を行うことができた。一方で、最終年度にはシミュレーションによって得られた成果を活用し、装置の試作を行うため、このための費用に充てたい。
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