研究課題/領域番号 |
20K12634
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
稲田 慎 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (50349792)
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研究分担者 |
中沢 一雄 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (50198058)
相庭 武司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40574348)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 情報総合センター, 教授 (80396259)
山口 豪 四国大学, 看護学部, 准教授 (60532182)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンピュータシミュレーション / インシリコ / 不整脈 / 心臓モデル |
研究実績の概要 |
心臓モデルを用いたコンピュータシミュレーションを実行し,不整脈の発生メカニズムを明らかするとともに,不整脈に対するリスク評価,新たな治療戦略を開発するための研究を行っている.2020年度は,大規模心室モデルを構築するとともに,構築したモデルに電気的興奮伝導の障害領域を導入したモデルを構築し,構築したモデルを用いたシミュレーションを実行することで心室性不整脈の誘発性および持続性を検討した.その結果,伝導障害領域の大きさ,伝導障害領域の心室内の位置,伝導障害の程度が,不整脈の誘発性に影響を与えることを明らかにした.特に,伝導障害領域が右室流出路にある場合,不整脈誘発性が高くなった.このことは,右室流出路は不整脈発生に対する何らかの特異性を有していることを示唆していると考えられた. 前述のような複雑な現象をシミュレーションにより再現することができたが,そのメカニズムは不明である.そこで,当初の研究計画にはなかったが,単純化した心臓モデルを用いることでメカニズムを明らかすることを目指した.具体的には,心室壁の一部を想定した直方体の心筋モデルを構築し,このモデルの中に電気的興奮伝導の障害領域を設定し,シミュレーションを行うことで,伝導障害と不整脈誘発性との関係について詳細に検討することとした.これまでの予備実験の結果より,伝導障害領域の部位は不整脈の誘発性に大きく影響を与えることが明らかとなった. また,全心臓モデルの構築を目指し,心房モデルの構築も進めた.これまでに,右心房内の洞結節(ペースメーカ細胞)からの電気的興奮の発生を想定した正常な興奮伝播,心房内において不整脈を誘発させるシミュレーション実験が可能となった.予備実験として,不整脈を誘発させるために与える電気刺激の条件について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により本務の形態が大幅に変化し,当該研究の遂行に必要な時間の確保が困難であったため,当初2020年度に予定していた計画の遂行はやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により研究の進捗が遅れているため,2021年度は,当初は2020年度に進める予定であった研究計画を遂行する.具体的には,心臓モデルに対する心筋線維走向,特殊心筋である洞結節,房室結節およびプルキンエ線維網の導入,肺静脈における異常興奮を再現することが可能な心筋細胞モデル等の組み込みを行い,より詳細なモデルへ改良を進める.また,心室モデルを用いたシミュレーション実験として,不整脈誘発性および持続性の検討は引き続き進めるとともに,心電図の理論的算出,ベクトル心電図への変換等,2020年度の研究計画を遂行し,さらに2021年度の研究計画に沿った研究として,疾患心臓モデルの構築,薬物やアブレーションによる治療戦略の検討等を行う. 上記のような研究計画のため,2021年度は心臓モデルの改良とシミュレーション実験を並行して行う必要があると考えられる.そのため,当初の研究計画におけるシミュレーション結果と格納するストレージを購入するための研究費の一部を,大阪大学サイバーメディアセンターにて新たに稼働した大型計算機システムの利用料へと振り替え,シミュレーション実験数を増加させることを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究の進捗が遅れたため,当初2020年度に使用が予定されていた研究費の一部が2021年度に繰り越されている.研究の遅れを取り戻すために,繰り越された研究費の一部は,大阪大学サイバーメディアセンターで稼働した大型計算機システムの利用料へ使用し,シミュレーション実験の数を増加させ,研究の進捗を加速させる.
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