本研究は、後眼部に容易に着脱可能で長期間持続的に薬剤投与が可能な薬剤徐放デバイスを開発し、眼内侵襲をなくした安全で確実な治療法を開発することを目的とした。3年目は、2年目に検討したラット用のマルチキナーゼ阻害薬のDDS条件を用いて、ラットの網膜脈絡膜新生血管(CNV)に対するCNV抑制効果を検討した。埋植用のDDSの徐放条件は2年目に検討した約1μg/day、約2μg/day、約3.5μg/dayの3種類を使用した。またネガティブコントロールとして薬剤を含まないプラセボDDS、ポジティブコントロールとしてベタメタゾンの硝子体注射を使用した。DDSをラットの強膜上に留置後14日目に眼底レーザー照射装置を用いて網膜下にCNVを作成した。その2日後に眼球を摘出して網膜フラットマウントを作成し、蛍光ラベルした網膜血管のCNV面積をイメージングソフトで解析した。その結果、ポジティブコントロールではCNV面積の低下が見られたが、DDS処置群では3種類の全条件でプラセボDDS対比CNV面積の低下は見られなかった。そこで薬剤の網膜移行性を評価するために、ウサギを用いてDDS投与後の眼球組織中の薬物濃度を評価した。DDS埋植16日後の網膜、脈絡膜/網膜色素上皮、強膜ホモジネート中の薬物濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、薬物を脈絡膜/網膜色素上皮で認めたが、網膜では検出できなかった。以上から、網膜への薬物移行を改善するDDS条件の探索(放出量の改善等)が必要と考えられた。
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