研究課題/領域番号 |
20K12651
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
立花 亮 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80305614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核酸医薬 / miRNA阻害剤 / 相分離 / エクソソーム / スフェロイド |
研究実績の概要 |
(A)核酸医薬の設計 pRINGはpri-miRNAに結合し、かつ、RISC中のmiRNAに結合し、miRNAの活性を阻害するという設計になっている。レポータージーンアッセイにおいて、従来の阻害剤を超える強力な阻害を引き起こすことを確認した。また、設計通りpri-miRNAの構造を壊し、強力に結合することを確かめた。 環状RNAによるmRNAの阻害は引き起こされることが確認できた。しかし、その作用は当初の予想と異なっており、環状RNAがドロップレットを形成し、そのドロップレットがオートファゴソームと思われる膜に囲まれている可能性を見出した。また、このドロップレットはアミノ酸欠乏により、速やかにオートファジーによって除去されることを見出した。通常のオートファゴソームの形成除去よりはるかに早く、非常に驚くべきことであった。現在、この現象を用いた核酸医薬の可能性を検討している。 RNA decoyの設計はできた。SRSF1の阻害により、蛍光タンパク質、抗体タンパク質の生産性が上昇するという、思わぬ効果を発見した。現在、産業応用可能性を検討している。 (B)エクソソームへのRNA封入量の検討 環状RNAのエクソソームへの封入は当初計画ではRNA BoxB構造とLambdaN22ペプチドの結合を利用する予定であったが、GFPとGFPに対するRNAアプタマーの方がより強力に結合することを見出した。また、結合していることはGFPの励起波長スキャンによって確かめられた。エクソソームへの封入量が増加していることを明らかにした。 (C)スフェロイドの形状検討 ゼラチン上に窪みを作ることでスフェロイドの形状をコントロールすることができた。ゼラチンの薄膜によるスフェロイドの封入はできることがわかったものの、スフェロイドの生存が芳しいものではなく、現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(A)核酸医薬の設計において、2つの有益な「副産物」が認められた。一つ目は環状RNAがドロップレットを形成し、これがオートファゴソーム様の構造体を形成していることを見出した。また、アミノ酸を欠乏させると30分という極めて短時間にオートファジーにより除去されることを見いだした。それらが除去された時、環状RNAのドロップレット以外のオートファゴソームの存在が認められる。すなわち、時間によっては選択的に環状RNAのドロップレットを除去できることを示唆している。この環状RNAのドロップレットにはRNA結合タンパク質が多数結合していることがわかっており、新たな核酸医薬の可能性があると考えている。次に、SRSF1のデコイがリコンビナントタンパク質の生産性を数倍向上させることを見出した。これは産業的に非常に有用であり、特に、抗体タンパク質などのバイオ医薬品の生産性向上に寄与すると考えられる。 (B)エクソソームへのRNA封入量の検討は研究実績の概要に記載の通り、計画通りである。 (C)スフェロイドの形状検討はスフェロイドの生存性に難があるものの、それほど深刻な問題ではないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(A)核酸医薬の設計に重点をおいて、研究を推進し、活性の高い核酸医薬を創出する。 環状RNAがドロップレットを形成し、これがオートファゴソーム様の構造体を形成していることを見出した。また、アミノ酸を欠乏させると30分という極めて短時間にオートファジーにより除去されることを見いだした。それらが除去された時、環状RNAのドロップレット以外のオートファゴソームの存在が認められる。すなわち、時間によっては選択的に環状RNAのドロップレットを除去できることを示唆している。この環状RNAのドロップレットにはRNA結合タンパク質が多数結合していることがわかっており、新たな核酸医薬の可能性があると考えている。次に、SRSF1のデコイがリコンビナントタンパク質の生産性を数倍向上させることを見出した。これは産業的に非常に有用であり、特に、抗体タンパク質などのバイオ医薬品の生産性向上に寄与すると考えられる。 (B)エクソソームへのRNA封入量の検討 エクソソームに特に局在するタンパク質の報告がなされている。このタンパク質プラットフォームを利用すると、より多くの環状RNAを封入できると考えている。すでに明らかにしたGFP-GFP aptamerの系またはそれ以外のaptamerを用いることによって、達成可能であると思われる。 (C)スフェロイドの形状検討 細胞の生存率を向上させることを検討する。架橋剤をブロックする方法など一般的な方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品のサーマルサイクラーが計画のものより、安価なもので十分であると判断し、それを導入したため。また特に、コロナの影響で出張旅費が必要なくなったことから、26万余の余剰金が出て、繰越をお願いする。
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