研究課題/領域番号 |
20K12653
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
草森 浩輔 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (90707407)
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研究分担者 |
西川 元也 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (40273437)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞移植治療 / オルガノイド / 血管コンポジット / ヒトiPS細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞移植治療における移植効率の最大化を目的に、移植後に血管構造を迅速に形成可能な血管コンポジット型オルガノイドを開発するものである。2020年度は、血管コンポジット型膵島オルガノイドの開発を目的に、各オルガノイドの分化誘導を試みた。膵島オルガノイドは、RezaniaらのプロトコルをもとにiPS72.3細胞から誘導した。大小異なるサイズのマイクロウェルが多数整列したシートを用いて膵島オルガノイドの分化誘導を行ったところ、形成された膵島オルガノイドのサイズに応じてオルガノイド中のインスリン産生細胞数が変化することを見出した。この結果と一致して、膵島オルガノイドのインスリン産生量はオルガノイドのサイズに依存することが示された。さらに、複数の膵島オルガノイドをひとつのウェルで同時に共培養したところ、オルガノイド同士が融合して一つの凝集塊を形成する様子が確認された。これらの結果は、オルガノイドのサイズ制御による分化誘導の制御・最適化の実現、ならびに複数のオルガノイドで形成された混合オルガノイドの作製の可能性を示すものである。現在は、Wimmerらの報告をもとに血管オルガノイドの分化誘導を試みている。今後、膵島オルガノイドと融合させた血管コンポジット型膵島オルガノイドを作製する予定である。本研究に関わる成果は、第36回日本DDS学会学術集会や日本薬学会第141年会などの複数の学会において発表し、細胞を利用した疾患治療に関する内容はJournal of Controlled Release誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、本研究の主目的である血管コンポジット型膵島オルガノイドの作製に必要な膵島オルガノイドの分化誘導に成功した。また、膵島オルガノイドのサイズを制御することでオルガノイド中のインスリン産生細胞の割合が変化することも明らかにした。研究代表者の分化誘導プロトコルでは、膵島オルガノイドをマトリゲル等に包埋する必要がなく、共培養することにより複数のオルガノイドを融合させることが可能であった。したがって、血管オルガノイドを作製することにより血管コンポジット型膵島オルガノイドを作製するという目的を達成できると考えられることから、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、血管オルガノイドを作製するとともに、膵島オルガノイドと共培養することで血管コンポジット型膵島オルガノイドを作製し、その機能評価を行う。具体的には以下の通り。 ・膵島オルガノイドと血管オルガノイドを分化誘導し、これらを共培養することで血管コンポジット型膵島オルガノイドを作製する。この時、各オルガノイドのサイズや細胞数を変化させることで、融合の効率化を図る。 ・免疫染色、PCR法あるいはELISA法などにより、膵島オルガノイドの膵島機能(インスリンやグルカゴン)および血管機能(CD31やコラーゲンIV)を評価する。 ・ルシフェラーゼ遺伝子を発現するiPS72.3細胞から分化誘導した膵島オルガノイドおよび血管コンポジット型膵島オルガノイドをBALB/c-nu/nuマウスの腎被膜下に移植し、ルシフェラーゼの発光量を指標に移植細胞の生存率を評価する。また、移植部位の切片を作製し、免疫染色により血管形成を評価する。
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