研究課題/領域番号 |
20K12655
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
平岡 和佳子 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00212168)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 機能性ペプチド / プリオンペプチド / アミロイドベータ / レドックス制御 / 電子スピン共鳴法 / スピントラッピング |
研究実績の概要 |
本研究は、ペプチドの自己組織化を金属により制御することで、その構造を多様化し、金属中心とレドックス関連分子との結合・反応性を制御し、生化学や医学への応用を目指すものである。20年度は,参加予定であった国内外の学会がコロナ禍により実施されず,本研究に関する情報収集が不足した面はあるが,実験の実施状況については,概ね良好であった. 試料としては,神経変性性疾患に関与すると考えられているタンパク質,およびレドックス制御タンパク質よりペプチド配列を抽出することを試みる.特にプリオンタンパク質(PrP)やアミロイドβタンパク質(Aβ)等は金属との結合部位を複数持ち,それらの一部はレドックス制御に関わる機能を持つ可能性が指摘されていることから,初年度は,銅イオン結合部位を持つPrPのオクタリピート領域等,金属結合領域を含むAβ短鎖ペプチドを用意した.得られたペプチドについて,現在立体構造の解析と,金属結合性に関するUV-VISスペクトロスコピー,電子スピン共鳴法,CD等の各種分光学的解析法を確立・実施中である.さらに,酸化ストレス関連分子の発生,および活性酸素種(ROS)との反応性を解析するため,各種ROS検出用蛍光色素法を用いたシステムの構築,スピンラッピング法によるROS検出システムの構築,培養細胞系を用いた生物効果検出システムの構築に着手中である. 以上の系を用いた手法の一部については,別途記載の国内学会・国際学会において発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
20年度は,参加予定であった国内外の学会がコロナ禍により実施されず,本研究に関する情報収集が不足した面はあるが,実験の実施状況については,概ね良好であった.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,当初の計画のうち,ペプチド鎖の設計と作成までは,終了したことになる.今後は,1.自己組織化ペプチドの相互作用の定量と構造変化の解析,2.自己組織化ペプチドにおける酵素反応発現の試み,3.アッセイモデルの確立となる.当初は,実験動物を使用したアッセイモデル系の確立までを視野に入れていたが,培養細胞系での実験系をまずは検討する予定である.
1.自己組織化ペプチドの相互作用の定量と構造変化の解析:ペプチド鎖の金属結合による二次構造の変化は、図に示した通りのCDスペクトルの紫外領域の変化によって検出する。さらにペプチドと銅イオンやニッケルなどの結合による錯体構造は前図の可視領域のCDスペクトルや可視吸収として検出することも可能であるため、紫外・可視領域をあわせて金属の結合の定量と二次構造の変化を定量化する予定である。 2.自己組織化ペプチドにおける酵素反応発現の試み:鉄や銅イオンがキレートしたペプチドでは、単独で存在する場合に比較して、各アミノ酸残基の酸化還元電位に変化が起きることが予想される。従って、電位差測定装置によりpKa値等を測定し、ペプチドの自己組織化効果を確認する。次に、金属単体、および金属錯体と反応することが期待される各種のレドックス分子を反応させ、金属結合ペプチドとの反応性について検証をする。 3.アッセイモデルの確立: 金属結合による特異的変性を示すプリオンペプチド・アミロイドペプチド鎖を用いて、病因と関連した特異的金属に競合する金属の導入を試み、変性に関連した各種の測定結果に対する影響を評価する。さらに変性抑制治療薬のモデルとして、細胞内への導入分子を結合することなどにより、細胞内での毒性試験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
20年度については,COVID-19の影響で研究室の立ち入りが制限された時期が長く,液体窒素・ヘリウムを用いた研究などが,一部遂行できなかったことから,繰越金として今年度の使用を計画した.今年度,液体窒素,液体ヘリウムを使用した分光分析を集中的に実施する予定である.
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