本研究は、ペプチドの自己組織化を金属により制御することで、その構造を多様化し、金属中心とレドックス関連分子との結合・反応性を制御し、生化学や医学への応用を目指すものである。金属結合性を持つペプチドは、その配列と金属イオンに依存して、多様な構造を形成し、結合中心の金属イオンの化学的性質も、多様なものになり得る。本研究では、ペプチドと金属イオンとの結合性に着目し、その親和性・立体構造を各種分光法により明らかにしつつ、レドックス制御機能を持つ機能性ペプチドの開発を目的とするものである。 最終年度までに残された課題として、金属ペプチドの立体構造について電子スピン共鳴法により、詳細な構造を報告する予定であったが、液体ヘリウム国際的供給の逼迫により、実施が不可能になったことから、金属結合による特異的変性を示すプリオンペプチド・アミロイドペプチド鎖を用いて、病因と関連した特異的金属に競合する金属の導入と、それらのレドックス制御能について各種生化学的手法による解析を実施した。さらに、機能性ペプチドとしての利用効果が期待できるペプチド・金属の組み合わせについて検討した。その結果、いずれのペプチドにおいても、単独で過酸化水素やスーパーオキシドの生成を見ることはかったが、金属に依存する活性酸類の発生を抑制する効果が得られた。 細胞増殖抑制実験では、細胞内においてプリオン由来のオクタリピートペプチドが二価銅イオンと反応することで、銅イオンによる細胞毒性を抑制することが示された。これらの結果は、ESRスピントラッピング実験で得られた結果と矛盾がないことが確認された。詳細については、以後の研究を進展させ、報告する予定である。
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