優れた細胞内デリバリー能を持つキャリアナノ粒子は、薬物運搬システム(DDS)の開発のみならず、核酸医薬品やゲノム編集における遺伝子治療用キャリア、そしてワクチンの開発においても重要である。本計画では、Lab-on-a-chipデバイスを用いて、A.アミノ酸型脂質の合成、B.キャリアナノ粒子の調製、 C.キャリアナノ粒子による薬物の細胞内デリバリー評価 までのプロセスを連結させて、脂質や薬物の種類に応じたキャリアナノ粒子の最適化を多変量解析から行う。具体的には、Aでは、フローマイクロ反応デバイスにて脂質各部を連結させて得られるライブラリーに対して、Bのマイクロ流体デバイスを用いて薬物担持キャリアナノ粒子を構築し、Cのマイクロ流体デバイスを用いてキャリアナノ粒子と細胞を混合し細胞内デリバリーを共焦点顕微鏡の画像解析から評価する。この方法により、リポソームの諸条件が細胞内デリバリーに及ぼす影響を一挙に評価することを期待する。2022年度は、A.本研究にて確立したフローマイクロリアクタを用いる合成法によりカチオン性脂質ライブラリーを構築し、得られたカチオン性脂質リポソームとして物性を整理した。B.Herringbone構造のマイクロ流体デバイスでは、流路に目詰まりが頻度高く発生し、その除去や洗浄工程が煩雑であった。小型スタティックミキサー導入したマイクロ流体デバイスは、分解洗浄が容易で混合状態も観察できる。そこで、薬物内包性能に関するパラメータを重回帰分析にて詳細に解析し、条件の最適化を行った。C.マクロファージ様細胞にカチオン性リポソーム添加し細胞内カルシウム応答パターンをリアルタイム蛍光イメージングにて取得した。その結果、リポソームがエンドサイトーシスにて細胞内に取り込まれる場合と膜融合で取り込まれる場合で応答性が大きく変化することを明らかにした。
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