研究課題
殺菌的に働いたり細菌の増殖を遅らせる機能をもつペプチドは、抗菌ペプチドとして古くから知られており、新たな抗菌ペプチドの報告が相次いでいる。しかしながら、薬物送達手法を含む創剤面に関する基礎研究が追いついておらず、臨床研究に進んでいるものは限られている。当該研究事業では、有効な抗菌プロファイルを示す抗菌ペプチドを遺伝子レベルで鎖状化し、これを生分解性高分子である人工エラスチンに融合させたリコンビナントポリペプチドの開発を目標に研究を進めてきた。令和4年度は、前年度までに人工遺伝子としてクローニングしたライブラリーの中から、黄色ブドウ球菌に有効なペプチドA・ペプチドB・ペプチドC、大腸菌に有効なペプチドD、緑膿菌に有効なペプチドE・ペプチドFの計6種にフォーカスした。リコンビナントポリペプチドの発現・精製は、これまでに確立したITC(inverse transition cycling)法により実施可能であった。抗菌ペプチドの繰り返し数を伸ばすにつれて収量が低くなる傾向が認められたが、調製したポリペプチドの機能評価に必要な量を十分に確保できた。研究計画書に明記した項目にしたがって、相転移活性評価、血清中での安定性評価、抗菌活性評価を実施した。その結果、リコンビナントポリペプチドのままで抗菌活性を示す誘導体、種々のプロテアーゼで加水分解すると抗菌活性を示す誘導体をはじめとして、様々な活性プロファイルをもつ抗菌ポリペプチドが多数得られた。特に、病原体が培養上清中に分泌するプロテアーゼで前処理することによって抗菌活性が大幅に増大するポリペプチドの発見は、細菌感染部位特異的に薬物を送達できるシステムとして、大きな意義があるものと考えている。現在、これらの結果をフィードバックして、新たなポリペプチドの分子設計に繋げているところである。
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