2021年度までに、角化細胞を培養後、脱細胞化処理により得られた細胞外マトリックス(dECM)を作製し、角化細胞を再度培養できることを確認した。さらに本dECM上では、細胞サイズが小さくなること、老化随伴β-ガラクトシダーゼの陽性細胞数が少なくなることから角化細胞の細胞老化を抑制することを見出した。また、この細胞老化の抑制は、少なくとも酸化ストレスにより誘導される細胞老化、複製ストレスによる細胞老化の両方に対して確認された。 2022年度は、2021年度に引き続き培養角化細胞由来のdECM上での培養表皮モデルの構築に取り組んだ。 セルカルチャーインサート上にてdECMを形成し、気液界面培養を行ったところ、培養表皮が形成された。一方で、未処理のセルカルチャーインサート上で形成した培養表皮と比較したところ、長期間培養した際の生細胞数の減少はdECMのほうが早かった。 この理由として、分化誘導を行った際の表皮幹細胞数が減少しているのではないかと推測し、表皮幹細胞マーカーの一つとされているLRIG1の発現量を比較した。その結果、dECM上では分化誘導後のLRIG1の発現量が低下していた。以上の結果から、dECM上で生細胞数の減少が早かった理由として、表皮幹細胞の数が低下したためであると考えられた。 上記の検討を通じて、長期間培養するためのdECMの要件を見出し、今後の改善に向けた計画を立てることができた。
|