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2022 年度 実施状況報告書

インクジェット技術を利用した細胞Durotaxis誘導基材作製の確立

研究課題

研究課題/領域番号 20K12661
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

津留 美紀子  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), 准研究員 (60399574)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードInkjet patterning / Gelatin / Durotaxis / Protease / AFM
研究実績の概要

本研究は、細胞が基材の硬さを認識し、軟から硬領域を指向し遊走する現象(Durotaxis)について、この現象を制御することで細胞の分化能を基材の物性から制御する足場基材の設計技術を目指している。具体的には、ハイドロゲルの表面にインクジェットパターニング技術を用いて極微量の加水分解酵素を滴下する。滴下後、酵素加水分解反応が進むことでハイドロゲルの弾性を改変させる。この方法を用いて複雑なパターンでハイドロゲルの弾性勾配を作り出し、この表面で細胞の振る舞いを解析することで、Durotaxis誘導を任意に制御できるような手法の確立を進めている。
研究実績:原子間力顕微鏡を用いた弾性測定法の実験系の構築に向けて、ゼラチン以外のナノファイバー材料を用いた手法についても検討を進めた。実験に用いたポリL乳酸ハイドロゲルについて、走査電子顕微鏡観察により数十nmのナノファイバーネットワーク構造であることを確認した。しかしながら、ファイバー密度が不均一な構造であることも確認しており、この構造は酵素加水分解による弾性勾配の制御に影響が出ることが示唆され、今後さらに検討する必要がある。
本研究で培ったハイドロゲル表面観察技術を応用して、湿度の制御が必要な微生物の増殖過程を光学顕微鏡観察する手法を確立した。この方法で得られたタイムラプス観察動画は、Nikon Small World CompetitionのHonorable Mentions に選出するに至った。また、本研究に関連する共著論文を3報発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

従来法で弾性改変したゼラチンゲルを用いた原子間力顕微鏡(以下AFM)の弾性測定実験を進める上で、AFM計測中に、サンプルが固定できず、詳細な解析ができないことが明らかになってきた。そこで、AFMを用いた水中計測が可能な、ハイドロゲルの固定方法の検討を進める。また、ハイドロゲル計測に最適なAFMのプローブの選択なども検討が必要であることから、やや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

Durotaxis誘導可能な弾性勾配足場基材の設計条件を見出すため、以下の通り進める。
1)現状でAFM液中計測がうまくできない原因と考えられるハイドロゲルの固定方法と、ハイドロゲルの厚みなどを検証する。またこれらの変更に伴うハイドロゲルへの酵素加水分解効率への影響について従来法と比較し、弾性勾配足場材料設計技術とAFM計測の互換性を図る。
2)AFM計測サンプルとしては非常に柔らかい材料であるハイドロゲルの弾性変化を詳細に解析するために、数種のAFMプローブで計測データを検証し、測定条件の最適化を進める。
3)1,2 で検討した実験系を元に、さまざまな条件の弾性勾配足場材料が得られるように、様々なインクジェット滴下条件、酵素反応条件で足場材料の設計を進め、Durotaxis誘導を検証する。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画ではAFMによる弾性勾配測定方法の確立を掲げていたが、現状の実験手法で得られるサンプルは直接AFM計測に展開できず、その結果、AFM弾性測定方法の検討に時間を要してしまった。そこで次年度は研究計画を見直し、①インクジェットパターニング手法による酵素滴下実験をAFM解析用に再検討し、②ハイドロゲルの弾性勾配について高精度にAFM計測する手法の確立を進める。①は既存の設備で対応可能であるものの、②については、酵素加水分解によるハイドロゲルの弾性変化をAFM測定で計測する先行研究がないこともあり、基準となる測定条件がない。そこで最適条件を得られるよう備品を購入し、実験の整備を進める。具体的には、バネ定数や探針の形状の異なる数種類のAFMプローブを購入し、実験データの再現性および精度の向上をはかる。また、AFM計測で得られたデータを解析するためのソフトウエアを購入する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Protocol for analyzing enzymatic hydrolysis of cellulose using surface pitting observation technology2023

    • 著者名/発表者名
      Tachioka Mikako、Tsudome Mikiko、Deguchi Shigeru
    • 雑誌名

      STAR Protocols

      巻: 4 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.xpro.2023.102066

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Marinagarivorans cellulosilyticus sp. nov., a cellulolytic bacterium isolated from the deep-sea off Noma-misaki, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Tsudome Mikiko、Tachioka Mikako、Miyazaki Masayuki、Tsuda Miwako、Takaki Yoshihiro、Deguchi Shigeru
    • 雑誌名

      International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology

      巻: 73 ページ: -

    • DOI

      10.1099/ijsem.0.005748

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] An ultrasensitive nanofiber-based assay for enzymatic hydrolysis and deep-sea microbial degradation of cellulose2022

    • 著者名/発表者名
      Tsudome Mikiko、Tachioka Mikako、Miyazaki Masayuki、Uchimura Kohsuke、Tsuda Miwako、Takaki Yoshihiro、Deguchi Shigeru
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 25 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.isci.2022.104732

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Ultrasensitive Assay for Enzymatic Hydrolysis of Cellulose2022

    • 著者名/発表者名
      Shigeru Deguchi, Mikako Tachioka, Mikiko Tsudome
    • 学会等名
      The 51st Conference of the German Colloid Society for Celebrating the 100th Anniversary of the Kolloid-Gesellschaft
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 分離培養とゲノム解析から明らかになる深海セルロース分解菌の新奇性2022

    • 著者名/発表者名
      立岡美夏子、津留美紀子、出口茂
    • 学会等名
      「細胞を創る」研究会 15.0
  • [学会発表] 3Dコンフォーカル顕微鏡を用いた大腸菌コロニー形成過程のタイムラプス解析2022

    • 著者名/発表者名
      津留 美紀子,出口 茂
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会 第78回学術講演会
  • [学会発表] 寒天培地上での海洋微生物の構造色の出現と発達のタイムラプス観察2022

    • 著者名/発表者名
      Mikiko Tsudome, Shigeru Deguchi
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [備考] Nikon Small World Competition, Honorable Mentions

    • URL

      https://www.nikonsmallworld.com/galleries/2022-small-world-in-motion-competition/growth-of-a-marine-bacterium-cellulophaga-lytica-on-agar

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公開日: 2023-12-25  

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