研究実績の概要 |
研究3年度目であったが、筆者自身の新型コロナウイルス感染症とその後の体調不良等により、解析が滞っている。遺伝子解析については、2023年度には完成させる予定である。2022年度中の新規症例はなかった。 研究計画に沿って、解析できる症例、再生不良性貧血(AA)2例、小児不応性血球減少症(RCC)2例、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)と診断された各症例について、(1)染色体解析、(2)血球形態異常(2008年WHO分類に基づく骨髄異形成症候群の診断基準で、診断的価値の高いカテゴリーAであるPelger核異常、低分葉好中球、顆粒形成異常好中球、微小巨核球、環状鉄芽球とそれ以外の巨赤芽球性変化などのカテゴリーBで整理)、(3)免疫染色での53陽性例の3つの観点から以下のとおりのデータを得た。 まず、染色体異常があったのはRAEBの1例のみで、45, XX, -7で予後不良とされるものであった。これは先刻報告した通りSAMD9遺伝子の変異が見いだされている。 形態異常については、筆者らの血液専門医と病理医の意見を総合して判断した。AA症例2例はいずれも血球形態異常はなく、RCCではいずれも巨赤芽球性変化(カテゴリーB)を認め、1例が顆粒形成不全好中球(カテゴリーA)を認めた。RAEBについては、芽球増殖に加えて形態異常が目立った。3例全例にPelger核異常、2例に微小巨核球、1例に顆粒形成不全好中球というカテゴリーAの異常を認めた。3例ともカテゴリーBの異常を認めたが、環状鉄芽球は全く認めなかった。 p53免疫染色については、AAでは検討された症例がなく、RCCでは1例が、RAEBでは2例が検討され2例とも陽性であった。p53免疫染色ではRCCか否かの判定は難しいことが示唆された。 以上からはAA、RCC、RAEBとなるにつれて形態異常が著しくなる傾向が示唆された。
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