磁気共鳴画像(MRI)装置に用いる次世代の磁場発生コイルを構築する上で、空間的に不均一で時間的に減衰する「遮蔽電流磁場」が解決すべき学術的課題の1つとなっている。これまでに、遮蔽電流磁場を消磁する手法を独自に考案して国際特許出願するとともに、小型コイル単体に対して原理実証している。そこで、複数個のコイル群で構成されるMRI装置用磁場発生コイルについても、提案する遮蔽電流磁場消磁法が適用可能なことを実証することを目的に、(A) 消磁コイルの代表的な2つの配置法に関する実験的評価、(B) 遮蔽電流磁場の消磁効果に与えるコイル間相互作用の数値的評価、並びに(C) 個別の消磁機能を有する複数個のコイル群で構成されたMRI装置用磁場発生コイルの最適設計を実施する。これらの実験・数値解析・最適設計に基づいた多角的な検討を通じて、独自性を有する遮蔽電流磁場消磁法に関する新しい学術的知見を創造する。 MRI装置用の磁場発生コイルは、なるべく少ない線材量で大口径空間に均一磁場を生成するために、形状や配置が最適設計された複数個の要素コイルで構成されるのが一般的である。高温超伝導線を用いてこのようなコイル群を構成して遮蔽電流磁場を除去するための消磁コイルを配置する場合、コイル群全体を1つの消磁コイルで囲むのは占積率が極端に低く非効率的なため、要素コイル単位で個別に消磁コイルを配置する方が効果的である。そこで、高温超伝導コイル単体に対してこれまでに実証済みである遮蔽電流磁場消磁法を、複数個のコイル群にも適用可能かどうか検証する必要がある。 そこで、本研究では、独自に提案する遮蔽電流磁場消磁法が高温超伝導テープ線を巻いたMRI装置用磁場発生コイルに適用可能なことを実証する。
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