研究課題/領域番号 |
20K12673
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
竹村 匡正 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (40362496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電子カルテ / 病院情報システム / 多分散型データベース / 医療機器ログデータ |
研究実績の概要 |
昨年度までに構築した多分散型データベース基盤(Redis)によるトランザクションおよびデータの一貫性を担保できるという結論に基づき、本年度は、大規模なデータを取り扱うことを前提とした電子カルテシステムの検討を行った。 これまでの電子カルテシステムが取り扱えていないデータにおける主なものとしては、医療機器の稼働状況(ログデータ)、病院で発生しない外の個人健康データ(Personal Health Record: PHR)、先進的な病院では導入されつつある医療機器や医療従事者の位置情報(ロケーションログ)などが考えられた。特に、患者に紐付かない医療機器の稼働ログデータ、医療従事者の位置情報等については単独でのデータと蓄積が必要になる反面、特定の患者のケアを行っているという状態・特定の患者にその医療機器を適用しているという場合があり、機器や医療従事者を主キーにした上で、それが適用された患者をデータとして保持する必要があると考えられた。 また、AIホスピタルのコンセプトに見られるように、データを外部のエージェント等を用いて監視した上で、機械学習等により何らかのアクションを行うシステムを前提とした場合、最大で全ての入院患者の広範囲のデータをリアルタイムに監視する必要があることが検討された。本研究では、具体的に「カルテ記載における患者の危険行動監視」「状況に基づく人工呼吸器のアラームの重要度判別」「カルテ記載における有害事象の自動スクリーニング」等を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状の電子カルテシステムにおいて当たり前とされている「診療時間内のテーブル横断検索」など、診療におけるオーダーエントリーやSOAP記載の制約を前提としない「次世代の電子カルテ」のコンセプトの検討については、概ね順調に推移していると考えられるが、研究計画時に前提としていた以上に電子カルテシステムの新たなニーズおよび可能性について検討が進んだため、ユーザーインタフェースの構築やハードウェアを含む分散型データベースへの実際の実装については、本年度は最小限に留めたものとなった。特に、機械学習を前提とした診療データに基づく「医療の質の担保」に対する期待は非常に大きく、これらの機能を前提としたシステム基盤の構築の必要性が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実際の電子カルテシステムをモックアップした形で分散型データベースシステム上にシステムを構築する。この場合、これまで本研究が対象のひとつとして検討してきたように、複数のオーダー情報を時系列で一覧できるのが望ましいことが判明しており(Fujita, Takemura, et.al, "The Improvement of the Electronic Health Record User Experience by Screen Design Principles"Journal of Medical Systems, 2020)これらのUIの実装を含めて検討を行う。実際の病院のデータの規模感に対応できるように、病院の実データを用いてデータ基盤としてのスペックを検証すると同時に、次世代の電子カルテに求められるであろうAI等によるインタラクションのあり方についても検討を行う。 その上で、実際の大規模病院並みのトランザクションを発生させた上で、基盤としての実証を行った上で、実病院の参照系DBと接続して限りなく実病院の環境に近づけて検証した上で、社会実装を行うことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、データの項目そのものについて検討を進めたことと、半導体不足によるハードウェア調達が非常に困難であったことがあり、予定していたハードウェア購入費を次年度に回すこととした。全体の研究計画については支障はない。
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