研究課題/領域番号 |
20K12681
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
藤井 敏司 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (80271518)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アミロイドβペプチド / バイオセンサー / 電気化学測定 / インピーダンス測定 / アルツハイマー病 / ナノバイオセンサー / ペプチド |
研究実績の概要 |
本研究は、超高齢化社会における喫緊の課題であるアルツハイマー病の発病リスクを迅速・高感度・安価・早期に評価できるシステムを構築することを最終目的とし、そのための検出システムの超高感度化を目的としている。 我々はこれまで、独自に開発したアルツハイマー病の原因物質の1つとして考えられているアミロイドβペプチドの凝集を促進するペプチド、AFPPを修飾した電極を用いたアミロイドβペプチドの電気化学的検出法を研究してきた。電極上のAFPP上に凝集させたアミロイドβペプチドに銅2価イオンを加えることで流れる電流量に基づいて、1時間以内でアミロイドβペプチドの定量に成功し、電極も再利用可能であることから迅速・安価な測定系を構築できたが、目的とする血漿中のアミロイドβ量を測定する感度(10~100 pM)には到達していなかった。 本年度は、さらなる高感度化を狙って、金ナノ粒子やカーボンナノチューブによる電極面積の拡大による高感度化を図ったが、感度の上昇は見られたものの、電極の安定性に課題が生じ、目的の一つである「安価」を達成することが困難であった。そこで、電極は耐久性のある通常のAFPP修飾電極を用い、アミロイドβペプチドの凝集による電極表面のインピーダンス変化を測定することとした。インピーダンス測定では、従来の測定条件であっても、感度が1桁向上したが、さらに、測定時の資料溶液条件に工夫を凝らすことにより、5 ~ 1000 pMの範囲でアミロイドβペプチドの濃度を測定することに成功した。今回開発することができた測定法によって、目的とする血漿中のアミロイドβペプチド濃度を定量することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、研究期間の初年度で申請書に記載した内容の検討が行えており、かつ、目的とした感度の向上に成功しているから。
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今後の研究の推進方策 |
目的とする血漿中のアミロイドβペプチドの濃度を測定できる感度に到達できたので、実際の測定対象である血漿中に含まれる夾雑物質が本測定法の結果に及ぼす影響の有無を調べていく。夾雑物質がアミロイドβ濃度の測定結果に影響を及ぼす場合には、試料の前処理などその回避方法を検討する。 また、電極および測定法、測定条件についてはさらなる高感度化の検討を行い、安定して測定できるようなシステムの構築を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で年度前半、大学構内への立ち入り制限などもあり、研究計画が予定通り実施できなかった。 今年度は、繰り越し金も含めて、計画的に研究を実施する予定である。
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