研究課題/領域番号 |
20K12683
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田島 英朗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主幹研究員 (70572907)
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研究分担者 |
菅 幹生 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (00294281)
錦戸 文彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (60367117)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PET / コンプトンイメージング / イベント抽出 / 画像再構成 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、提案する部分リング型装置の同時計数処理に関して、PET及びコンプトンのどちらのイベントとしても抽出できるシングル検出イベントが存在することに着目した。具体的には、コンプトンイベントと同時に、シングルの光電吸収イベントが存在する場合、または、コンプトンイベントが2つ同時に存在する場合には、それらの組み合わせをPETイベントとしても抽出することが可能である。そのような冗長性のあるイベントをPETイベント、またはコンプトンイベントに振り分けた場合に、どのような性能差が表れるのか明らかにするため、コンプトンを含むイベントからPETイベントを抽出する手法をPETリカバリー法として実装した。モンテカルロシミュレーションで生成したデータにPETリカバリー法を適用し、それぞれのイベントセットについて画像再構成を行った。なお、頭部測定を想定した装置サイズで、内側の散乱検出器の部分リングは素子サイズ1×1×6立方ミリメートルのSiで半径15cm(内径30cm)、外側の吸収検出器の部分リングは2.9×2.9×7.5立方ミリメートルのGSO結晶で半径20cm(内径40cm)のように構成した。画像再構成には、PETイベントとコンプトンイベントを組み合わせて1つの画像を生成可能なハイブリッド画像再構成法を適用した。PETリカバリー法を適用した結果、PETイベント数は8%増加し、コンプトンイベント数は15%減少した。画像再構成を行った結果、提案装置のゆがみ補正効果はどちらも大きな差はなかったが、PETリカバリー法を適用し、冗長性のあるコンプトンイベントをPETイベントとして抽出した方が、わずかながら空間分解能がよくなることが示された。よって、提案装置においては、PETリカバリー法の適用が有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案装置で取得されるデータの特性について検討した結果、イベントの抽出方法による性能改善の可能性が示唆された。この性質は、部分リング型装置に限らず、PET・コンプトンハイブリッド装置全般に適用できるもので、着実な進捗といえる。 また、検出器候補であるSi素材を評価するためのフロントエンド回路基板の調達を行ったことで、散乱検出器候補の評価を行うための準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として、Si素材の検出器の評価を予定している。また、文献調査の結果、今年度用いたパラメータよりも高いエネルギー分解能を得られることが判明したため、シミュレーションのパラメータを更新して実施する予定である。また、冗長性のあるイベントの抽出方法の影響を、部分リング型装置からフルリング型装置へ拡張して調査し、知見を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地開催を見込んでいた学会や研究会がオンラインのみの開催となり、旅費を他の項目として使用するように計画を変更した。 検出器評価のための実験用部材を調達する予定である。
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