研究課題/領域番号 |
20K12685
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 祐次 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (50261582)
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研究分担者 |
清水 孝一 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授(任期付) (30125322)
橋本 守 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (70237949)
松村 健太 富山大学, 学術研究部医学系, 特命助教 (30510383)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血中中性脂肪濃度 / 後方散乱光 / 空間分解計測 / 無侵襲 / モンテカルロ・シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の大きな目標である、血中中性脂肪濃度の無侵襲光学計測の実現のため、計測手法は可視から近赤外の波長領域での後方散乱光の空間分解計測を基礎としている。そこで、計測対象の一つとしている前腕部静脈について数値モデルを構築し、網羅的にモンテカルロ・シミュレーションを実施し、血管走行状態による後方散乱光強度を理論的に求め、静脈血中中性脂肪濃度に対する感度特性の評価を行った。その結果、光源と検出器の距離が変わると、静脈の形状や生体内の位置に応じて後方散乱光強度への影響が異なることが分かった。特に、静脈径と深さが数 mm程度であれば、光源と検出器の距離が10 mm以内と短い場合に感度が高くなることが明らかとなった。さらに、近赤外吸光分光法に基づき、波長を変えて同様なシミュレーションにより、可視光領域での計測から、血中中性脂肪濃度に依らずに、静脈の形状や生体内の位置による影響を補正する手法を構築した。 一方、毛細血管を含む皮膚組織を模した層状構造の数値モデルについても同様な数値シミュレーションを実施した。静脈モデルと同様に、層の深さと検出位置と関係を明らかにした。さらに、1次元または2次元断層の非線形逆問題解法を考案した。これは、光の散乱過程における光子毎にばらつきを考慮する手法であり、線形解法に対する有効性を明らかにすることができた。これにより、毛細血管が集中している特定層の信号抽出の可能性が得られた。 さらに、メディカルフォトニクス社の協力により試作機を用いて、実験的検証のための事前実験、実験ファントムの準備や、スマートフォンによる計測アプリケーションの開発準備を前倒しで進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時のロードマップでは、2020年度では「I.血管走行状態に関する網羅的数値シミュレーション」の全期と「II.近赤外吸収分光技術の組み込み、II.I 吸収波長特性の影響」の半期に相当するが、実績概要に示すとおり、ほぼ予定通りの進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、予定通り申請時のロードマップにほぼ沿って行う。詳細は以下の通りである。 II.I. 吸収は超特性の影響ーヘモグロビンを始めとする生体含有色素や水分等の吸収波長特性の散乱係数計測に対する影響に関する実験及びシミュレーションによる評価を進める。 II.II. 分光手法による散乱係数計測の較正法の構築ーシミュレーションについては研究実績の概要で述べた結果を基に較正法の検討を行う。実験については、引き続き実験ファントムの構築を進め、現有の近赤外の波長可変レーザ、光検出器をそのまま利用、またはメディカルフォトニクス社の製品または試作機を利用し、必要であれば専用機の開発も行い、実験的評価を進める。専用機の開発の場合は消耗品としてLED、PD、電子部品等を準備する。 III.I. 容積脈波信号と血中脂肪濃度の関係の評価ー現在準備を進めているスマートフォンでの計測アプリケーションの開発を継続する。 IV.I. ヒトを対象とした脂肪負荷試験による本技術の評価ーメディカルフォトニクス社の製品または試作機、スマートフォン等での臨床データ取得のため、脂肪負荷試験の実施に向けて準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の使用額が申請時より下回った理由は、コロナ感染対策のため旅費と人件費・謝金をほとんど使用しなかったことと、コストの観点からシミュレーション環境として計算機センター専用サーバを選択したため、物品費の効率的な利用ができたためある。今年度以降は、実験関係の研究を重点化するため、申請時に比べ計測用PCやファントム用薬品等の実験用物品に重きを置いて執行する予定である。
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