研究課題/領域番号 |
20K12692
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高井 昭洋 愛媛大学, 医学部, 研究員 (70632917)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 上方照明システム / 腹腔鏡手術 / 陰影の手がかり / 内視鏡手術 / 上方照明デバイス |
研究実績の概要 |
本研究の2本柱は,上方照明デバイスを用いた腹腔鏡上方照明システムにおいて,通常照明との比較をしてその有用性を証明することと,臨床応用できる照明デバイスの開発である.2020年度には上方照明デバイスの開発が大きく進んだ.これまでの研究で,ヒトの手術で用いるために必要な明るさや大きさは確保することができるようになっていた.しかし,デバイスの温度上昇の問題が最後に残っていた.これを,2020年度に,ペルチェ素子による冷却装置を用いて,細いチューブを照明デバイスに搭載し,生理食塩水で灌流することで解決できたことが照明された.その結果は,以下の通りである.冷却装置を搭載した照明デバイスを用いて,点灯時のデバイスの表面温度をサーモグラフィーで測定したところ,冷却なしの場合,消費電力13.6W(1.6A,8.5V)において,20分の経過で温度は約58度に達しプラトーとなった.一方,同じ消費電力で,冷却ありの場合,温度上昇は見られず,最高温度で23.9度であった.冷却ありの場合,照明点灯後も温度上昇は見られず,およそ5分でプラトーに達することがわかった.これまで温度上昇への対応がほとんどできていなかったことを考えると,2020年度の研究実績は大きな前進といえる.同年8月には特許を出願した. もうひとつの柱である照明装置の違いによる手術の客観的評価による比較検討については,外科医2名において異なる術式で,ひとりはカダバーで,ひとりはブタで実験を行った.しかし,当初の予想よりもそれぞれの手術術式において,差が出るような評価項目ではないかもしれないと判断されたため,十分な検証はできていない.その代わりに,上方照明と通常照明による手術映像をブタの実験により撮影し,映像の質の比較検討を行った.現在,データを収集解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2本柱の内,照明デバイスの開発については,温度上昇の問題がもっとも解決困難と考えていたところ,それが解決されたために,一気に進んだと考えている.今後は,臨床応用に必要な安全性の確保のために何をしなければならないかという確認と,その対応が必要になってくる.もうひとつの柱である,異なる照明デバイスにより,それぞれの照明システムで手術を行い,比較検討する方法については,2020年度に行った実験の結果,被験者へのインタヴューにより,当初予想された結果よりも,比較する評価内容で差が見られないことがわかったため,こちらの研究についてはやや進捗状況に遅れが見られる.
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今後の研究の推進方策 |
照明デバイスの開発については,デバイスの製作会社である光電気LEDシステム株式会社と緊密に連絡を取り合っている.今後,臨床応用するために必要な,とくに安全性の問題をクリアするためには,どのようなことが必要になるかを,薬事相談をすることが決定しており,今後の開発に必要な問題点を明らかにし,それに応じた対策をとるようにして研究を進めてゆく. 照明システムの異なる手術による比較検討は今後も行ってゆく予定であるが,その評価に必要なタスクや評価内容については,再考の余地がある.技術認定評価指標による評価方法は同様とするが,手術全体を通した複雑で長い手技よりも,比較的単純な(例えば,消化管吻合など)に絞り,反復して行うことで,データを集めて解析することで対応する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,冷却装置を搭載した照明デバイスを開発するにあたり,新型コロナウィルスのまん延による移動制限がかかったために,臨床応用を目指した素材の選定に時間を要した.そのため,当初年度末に納入予定であった照明デバイスが完成せず,2021年度に持ち越した.さらに,照明デバイスの数が少なく,比較検討のためのカダバー及び動物実験の内容にも再検討の余地が出てきたことから,研究に遅れが生じ,2021年度への繰り越しとなった. 今年度は,冷却装置がついたデバイスが年度当初には完成予定であり,これを受けて,カダバー及び動物による実験を進め,短時間で,試技の回数を増やすことで,データを収集し分析を行う.
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