金属環部のQ値と結合係数の導出方法として、金属環の有無によるインピーダンスの差分を利用した方法の有効性について検討を行った。励磁コイルの側に金属環を配置したときの励磁コイルのインピーダンスを測定し、金属環が無いときのインピーダンスからの差分を利用することで金属環のQ値を推定した。実際の金属環を用い、本手法で環構成を変化させてQ値の推定を行った結果、等価回路をもとに解析した結果と同様の傾向を示したことから手法の有効性を確認することができた。さらに、推定したQ値を用いた結合係数を導出する方法も提案し、既存の方法と同精度で結合係数を求められることを確認できた。以上より、提案した手法は、発熱素子の実機を評価し、改善していく上で必要な回路パラメータの導出につながる。 次に、封入を想定して、金属環の両端に蓋を配置した発熱素子を作製し、その性能について検討を行った。小型励磁コイルを利用した素子の消費電力の測定から、蓋の有無による影響はほとんどない、LC共振用コンデンサを環内に配置しても問題ないことが確認できた。また、環径を小型化しても、断熱材中で励磁加温した際の温度上昇への影響は軽微であることを確認した。温度で色が変化するインクを含有させた寒天ファントム上に発熱素子を配置した励磁加温も行ったところ、励磁磁束密度による加温領域の拡がりを確認することができた。テクスチャー評価装置を用いて外形の25%押し込みにかかる荷重について検討を行ったところ、小径の金属環ほど大きな荷重が必要であることを確認した。また、LC共振器のコアとして検討しているフェライトをリン酸緩衝生理食塩水に37℃下で7日間漬け、その溶液内の金属(フェライトの組成に限る)の含有状況をICP-OESで調べたところ、Fe以外は検出限界となることを確認した。以上より、本発熱素子は、生体内環境下においても十分機能する可能性がある。
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