研究課題/領域番号 |
20K12697
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
石原 量 順天堂大学, 医学部, 助教 (30633507)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 表面機能化自律駆動マイクロチップ / UVグラフト重合法 / 部分グラフト重合 / 細胞外ベシクル / その場診断 / 乳がん |
研究実績の概要 |
本研究は,がんをはじめとする様々な重篤な疾患の“その場診断手法”を確立するために,申請者が開発している,持ち運び可能な「表面機能化自律駆動マイクロチップ」を改良し,バイオマーカーの裸眼および高感度検出をめざすものである。今年度得られた成果は以下の3点である。 (1)表面機能化自律駆動マイクロチップを用いて,がんのバイオマーカーとして知られるマイクロRNA(hsa-miR-500a-3p)を0.5 マイクロリットルと少量のサンプルから,短時間かつ高感度(検出時間18分,検出下限値 41 fmol/L; 体液中に存在するマイクロRNAの濃度範囲)で検出できたこと,および本マイクロチップが常温において1週間保存可能であったことを,Industrial & Engineering Chemistry Research誌に発表した。 (2)表面機能化自律駆動マイクロチップ作製の際に,標的となるマイクロRNAを捕捉する DNAの固定位置を変化させること,および検出に利用する蛍光分子の色を変化させることで複数のマイクロRNAを少量のサンプル,短時間という利点を損なうことなく同時検出することに成功し,その成果をAnalytical Sciences誌に発表した。 (3)同じくがんのバイオマーカーの一つである細胞外ベシクルの高感度検出を可能とする表面機能化自律駆動マイクロチップの作製をめざした。ポリジメチルシロキサン製のマイクロチップの流路内表面のUVグラフト重合する部位の制御方法を確立し,検出部位に到達するまでの部分には非特異吸着を抑制するグラフト鎖を成長させ,検出部位には細胞外ベシクルを捕捉するための抗体を固体するためのグラフト鎖を成長させた。これらによって,検出部位に到達するまでの細胞外ベシクルの損失を抑えることができた。この成果は,第30回日本MRS年次大会において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオマーカーの裸眼検出に関しては,保存安定性および再現性の高い高密度DNA修飾金ナノ粒子の調製に時間がかかっているため,高感度検出に注力し研究を進めた。部分的にUVグラフト重合する方法を確立し,その効果を確認できたことから,概ね研究は順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞外ベシクルを高感度検出できる表面機能化自律駆動マイクロチップの作製をめざし,部分グラフト重合の効果を検出下限値を算出するなど定量的に評価するとともに,より実サンプルに近い血清などを用いた実験も視野に入れ研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,旅費の支出が無かったため。来年度は引き続き,マイクロチップ作製のための化学系および生化学系試薬の購入,本課題に関連した学会への参加,および論文投稿を予定している。
|