研究課題
本研究は,がんをはじめとする様々な重篤な疾患の“その場診断手法”を確立するために,申請者が開発してきた,持ち運び可能な「表面機能化自律駆動マイクロ流体チップ」を改良し,バイオマーカーの裸眼および高感度検出をめざすものである。今年度得られた成果は以下である。今年度も昨年度に引き続き,がん診断確立においてもっともキーとなる細胞外ベシクルのさらなる高感度検出に専念した。これまで開発してきた表面機能化自律駆動マイクロチップの改良として,まずマイクロチップの基材としては,検出感度を1桁以上向上することに成功した流路の一部に狭窄した部分を持つポリジメチルシロキサン製のマイクロチップを引き続き利用した。つぎに,細胞外ベシクルの検出部位までのマイクロ流路内壁にUVグラフト重合法を利用して非特異的吸着を抑制するグラフト高分子鎖を付与した。検出部位にはこれまで通り細胞外ベシクルを特異的に捕捉するための抗体を固定した,これらの工夫によって,検出部位に到達するまでの細胞外ベシクルの損失を抑えることに成功し,これまでよりも高感度で細胞外ベシクルを検出することに成功した。この成果は,国際学会 The 13th SPSJ International Polymer Conference (IPC2023)において発表した。さらに本成果を発表の一部として,次の2つの招待講演(第7回バイオ工学研究交流会および第72回高分子討論会)においても発表した。最後に,ここで得られた細胞外ベシクルの検出感度は唾液や血液といった生体サンプルに適用することができればがん診断の実現が期待できる値である。しかし血清などを流すと一定の頻度でマイクロ流路が詰まってしまうという課題がある。また夾雑物の影響で感度の低下も考えられる。今年度で本課題は終了となるが今後これらの課題を解決し,様々な疾患のその場診断を確立したい。
すべて 2023
すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)