研究課題/領域番号 |
20K12698
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
永岡 隆 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (00367054)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メラノーマ / 人工知能 / 深層学習 / データ加増 / attention |
研究実績の概要 |
深層学習を用いたメラノーマの自動診断システム開発に向け、要素技術の開発に取り組んだ。具体的には、AIの視野を集中させる手法の開発、敵対的生成ネットワークによるデータ加増を用いた深層学習の訓練法の開発、深層学習とサポートベクターマシーンを組み合わせ、少ないデータでも識別器が訓練できる手法の開発、mix-up、random croppingなどのデータ加増による診断性能向上の検証、その他最新の知見を取り入れた新規ネットワーク構造の採用・検討などに取り組んだ。 視野の集中に関しては、深層学習に色素病変の部分だけを投入する手法を複数組み合わせ、診断性能の向上が確認された。加増においても、中心部に病変部が残る形で、周辺の皮膚のみを差し替えることで正診率が向上する効果が確認された。深層学習はどの部分を見て診断したのかを明らかにする、ホワイトボックス化が進んでおり、本研究もその応用として実施。深層学習に見て欲しい部分をより強調して提示することで、診断性能が向上することが確認されつつある。より積極的に視野を限定するため、病変部を正確に抽出し、そのマスクを深層学習の特徴マップに重畳する手法の検討を今後進める。 本邦ではメラノーマ患者が少ない事などを鑑み、複数のデータ加増手法による診断性能の向上にも取り組んだ。今年度はパッチ加増の有用性について検証し、弱いパッチ加増がメラノーマ診断に有効であることが確認された。前述の病変部周囲のみを差し替えることによる加増効果が確認されつつあり、本研究による加増が人工知能の学習に有用であることが判明した。 今後はメラノーマ以外の希少病変、例えばCOVID-19のCTデータなどを対象に、ビックデータが必要な深層学習の訓練に資する手法の開発に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
貴重な医療データを用いた深層学習の訓練には、データの加増が必須である。これまで自然画像に対して用いられてきた各種加増技術の採用を進めていたが、これまでに得られた研究成果によって、メラノーマ診断に特有なデータ加増が重要であることが明らかになりつつある。これは研究計画当初には判明していなかったことであり、貴重な知見が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
加増と視野の2本柱で検討を進めていたが、どちらも病変部のみを注視させること、また周りの皮膚部を様々な人種に対応するために差し替えて訓練させることの有用性が確認されつつある。今後はメラノーマ診断に特有なデータ加増手法の開発に取り組むとともに、病変部をより正確に抽出する手法の検討も開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、研究打ち合わせや国際学会における成果発表がほとんど実施できなかったため、支出の大部分を停止せざるを得なかった。また、仮想通貨ブームに伴うGPUの枯渇で、深層学習に必要なGPUの入手が極めて困難となり、購入できなかったことも支出できなかった理由の一因である。
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