研究課題
研究代表者は、近赤外光感受性物質を結合させたアビジン(AvIR)と、標的細胞の表面抗原に対するビオチン化抗体(BioAb)とを用いた光免疫療法(PIT)の有 効性を実証してきた。このAvIRを利用したPITは、複数のBioAbを標的化分子として用いることによって、異なる種類の細胞群を同時にAvIRで標識し、近赤外光が 照射された細胞のみを特異的に殺傷できる極めて安全かつ効果的な癌の低侵襲治療システムである。本研究では、AvIR-PITのさらなる応用展開として、腫瘍関連 抗原および抑制性免疫補助シグナル受容体CTLA4に特異的なBioAbのカクテル抗体を用いることで、腫瘍細胞そのものに加え、腫瘍組織中に存在して抗腫瘍免疫応答を抑制している制御性T細胞を併せて殺傷する新規なAvIR-PITについて検討を行う。2021年度は、樹立したCTLA4を安定導入したCHO-K1細胞株、および別途取得したMC38-CEA細胞株を用いたin vitro AvIR-PITを実施した。その結果、PITによるそれぞの抗原に特異的な殺細胞効果を確認した。
4: 遅れている
納まりを見せないSARS-CoV-2の感染拡大を受け、動物舎への入舎制限等がかかり、また、プラスチックウェアや試薬類の調達不良・納期遅れも重なって、当初予定していたような研究・実験を実行に移すことが困難であった。遠隔講義への対応などにも想定より多大なエフォートを割く必要があり、少なくない遅れが生じてしまった。遅れを取り戻すべく、鋭意取り組んでいる。
BALB/cマウスより単離した脾細胞を標的として、CD44あるいはCTLA4に特異的なBioAb(それぞれBioCD44, BioCTLA4)とAvIRを用いたPITのin vitroにおける 殺細胞効果について検証する。さらに、4T-1細胞やC57BL6マウス大腸がん細胞株MC38等を利用した同種移植担がんモデルを作成し、遅れているin vivoにおけるAvIR-PITについて検討する。特に遠隔腫瘍に対するアブスコパル効果について精査していく予定である。
in vivo実験の遂行に遅延が生じたため、実験動物に係る経費に残額が生じた。本年度は遅れた実験を含めた実験計画に基づいて予算を執行していく予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Future Sci OA.
巻: 7(5) ページ: -
10.2144/fsoa-2021-0006