研究課題/領域番号 |
20K12704
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
福地 知則 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (40376546)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 陽電子断層撮影法 / PET / 複数核種同時イメージング / Sc-44 / Ti-44 / RIジェネレータ |
研究実績の概要 |
開発中の複数トレーサー同時イメージングPET(Multi-isotope PET(MI-PET))により実現する有用なアプリケーションの候補として、2核種同時イメージング実験を行った。実験は、MI-PET用核種Sc-44mで標識したSc-44m-DOTA-TATEとF-18-FDGを、がん疾患モデルマウス(C6およびAR42Jがんを移植)に同時投与してイメージングすることで、2つのトレーサーの動態を同一個体、同一条件下で比較するものである。 2020年度の研究から、詳細なイメージング解析を行うためには、Sc-44m-DOTA-TATEの比放射能を向上させる必要であることが判明したため、Sc-44mの精製度を高め、DOTA-TATEへの標識率を向上させた。その結果、Sc-44m-DOTA-TATEのがん部位への集積を詳細に画像化し、集積量の時間変化をF-18-FDGとの比較しながら動態解析することに成功した。 また、MI-PET核種Sc-44使用の利便性を向上させるために、Ti-44/Sc-44ジェネレータ製造も進めており、サイクロトロン加速器からの陽子ビーム(30 MeV)をSc-45ターゲットに照射しTi-44を製造した。2021年度、2日間の連続ビーム照射で約2 MBqのTi-44を製造することに成功した。この量は小動物のイメージングに必要な放射能量である。照射ターゲットからTi-44の単離を行い、放出されるガンマ線の測定により、Ti-44/Sc-44以外の放射能がないことを確認した。さらに、Ti-44をイオン交換樹脂に吸着させることで、ジェネレータとしてのパッケージングの研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数トレーサー同時イメージングPET(Multi-isotope PET(MI-PET))により実現する有用なアプリケーションの開発を進めているが、2021年度、トレーサーとして使用するMI-PET核種Sc-44mの純度を向上させ、薬剤の標識率を上げることに成功した。これにより、Sc-44mで標識したDOTA-TATEとF-18-FDGを同時投与したがんモデルマウスにおいて、各トレーサーの動態を詳細に解析することが可能となり、当初の研究目的を達成している。したがって順調に研究が進展していると言える。 また、MI-PET核種Sc-44使用の利便性を向上させるために、Ti-44/Sc-44のジェネレータ開発を進めているが、2021年度、小動物にイメージングに必要な放射能(約2 MBq)のTi-44の製造に成功した。今後、さらにTi-44を追加製造して放射能量を増やすとともに、ジェネレータとしてのパッケージングを行う予定であり、順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度、MI-PET核種Sc-44mの精製純度を上げることにより、Sc-44mによる薬剤の標識率を向上させることに成功し、Sc-44m-DOTA-TATEとF-18-FDGを同時投与したがんモデルマウスにおいて、両トレーサーの動態を詳細に同時解析し比較することが可能となった。2022年度は、がん疾患の進行度、がん種などの違いによるイメージング実験を行い、複数トレーサーの動態差をさらに詳細に解析して行く予定である。 また、MI-PETの有用性をさらに高めるために、抗体を用いたイメージング剤など、これまで同時撮像が行われてきていないトレーサーについのSc-44mによる標識も行い、イメージング実験を行う予定である。 さらに、MI-PET核種Sc-44の利便性を向上させるためにTi-44/Sc-44のジェネレータ開発を進めているが、2021年度までに、小動物にイメージングに必要な放射能(約2 MBq)のTi-44の製造に成功している。2022年度は、Ti-44を追加製造して放射能量を増やすとともに、ジェネレータとしてのパッケージングを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度、新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のために在宅勤務期間が生じたため、イメージング実験用の疾患モデルマウスの作成ができない期間が生じた。そのため、イメージング実験の回数が当初計画より少なくなり、繰り越し金が生じた。2022年度において、当初計画より実験回数を増やす予定であり、繰り越し金をその実験のために使用する。
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