研究課題/領域番号 |
20K12710
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡本 美奈 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50457008)
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研究分担者 |
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (10263261)
江副 幸子 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (90379173)
大川 竜麻 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員(常勤) (40838520)
HAGHPARAST SEYED・MOHAMMAD・ALI 大阪大学, 医学部附属病院, 特任研究員(常勤) (60838754) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 細胞老化 / 品質評価 |
研究実績の概要 |
本研究において、ヒト組織由来間葉系幹細胞(MSC)の異なる由来組織における特性の違いや細胞老化に伴う品質変化についての解析を行うため、R3年度は主に、滑膜、臍帯、骨髄の3種の組織由来MSCを有血清培地及び無血清培地で培養し、培養早期(P4-P7)と後期(P10以降)における細胞老化や核型、免疫抑制効果試験の検討を行った。 昨年度から継続して行った骨や脂肪への分化能について、滑膜MSC及び臍帯MSC、有血清培地で培養した骨髄MSCでは、培養後期(P14)においても分化能を維持していることが明らかになった。細胞老化マーカーp16及びp21の遺伝子発現について定量PCRで検討を行った結果、骨髄MSCは滑膜や臍帯MSCと比較して比較的早期(P9)に細胞増殖能が低下し、老化マーカー遺伝子の発現上昇が認められたことから、細胞老化と分化能には必ずしも相関性が認められない可能性が示唆された。また、各種細胞の培養後期においてMSCの表面抗原マーカーCD105の発現が顕著に低下するが、有血清培地で培養した細胞では、HLA-ABCの発現の低下も認められたことから、品質確認の重要なマーカーであると考えられる。さらに、MSCの特性である免疫抑制効果を調べるためリンパ球混合試験を行ったところ、培養早期(P6)の臍帯MSCとの共培養において、リンパ球の増殖が抑制された。培養後期の各種MSCにおける免疫抑制能の有無についても検討が必要と考える。また、長期の培養は核型異常を誘導することが知られているため、Qバンド解析を行った。その結果、無血清培地で培養したMSCの1例で、培養早期(P5)では正常であった核型が、細胞の形態に異常が認められないにもかかわらず、培養後期(P11)においてクローン性の核型異常が確認された。以上から、細胞形態や分化能の維持だけでなく、継代数の増加に伴う安全性評価の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、動物実験施設建替え工事による利用制限のため、in vivoでの検討が困難であり、主にin vitroでの検討を行った。核型のQバンド解析において、培養後期(P10以降)の細胞や有血清培地を用いて培養した細胞では、増殖能の低下により分裂像の確認が困難であり、解析可能なサンプル調製に時間を要した。全般的に、細胞老化を検討するための培養後期のサンプルの調製に時間を要するが、骨や脂肪への分化能実験や表面抗原マーカーの解析、RNAの抽出に必要なサンプルの回収を同時に行うことで、順調に進めることができている。 また、末梢血単核細胞(PBMC)とMSCの共培養により、MSCによる免疫反応抑制効果を調べるリンパ球混合試験では、R3年度中に最適な条件の検討を終えたことから、最終年度では各種MSCを用いた検討がスムーズに実施可能である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は主に、MSCの造腫瘍性試験や免疫抑制反応効果試験の検討、RNAシークエンスの解析を行う。 R3年度の核型解析の結果から、核型異常が認められた培養後期の細胞の軟寒天コロニー形成試験を実施し、継代数の増加に伴う安全性の評価を行う。また、R3年度に実施したリンパ球混合試験の予備検討において、最適な条件プロトコールを確立できたことから、各種MSCの免疫抑制効果能の有無や違いについてを評価を行う。具体的には、滑膜、臍帯、骨髄由来のMSCをそれぞれ有血清培地と無血清培地で培養し、培養初期(P4-P7)と後期(P10以降)の各種細胞を用いてヒト末梢血単核細胞(PBMC)と共培養を行い、MSCの特性である免疫反応抑制効果についてサンプル間の比較検討を行う。さらに、各種MSCにおける細胞老化や分化能など品質に関連する遺伝子発現の違いをRNAレベルで比較検証するため、RNAシークエンスの解析を行う。既に、R3年度に各種MSCからRNAを抽出し、シークエンスデータを取得済みであることから、最終年度は主に解析を行い、組織間または継代数の違いによる遺伝子発現の変化や違いについて検討を行い、細胞老化や由来組織による特性の違いが品質に与える影響について総合的に評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
核型解析については、R3年度に全て実施する予定であったが、培養後期における継代数の増加に伴い分裂能が低下し、サンプルごとにカルノア固定の条件が異なるため、解析サンプルの調製に時間を要した。現在、継続して核型解析のサンプル調製を行っており、条件検討をほぼ終えたことから、解析が困難であった数種のサンプルについて次年度の早期に核型解析の実施が可能である。また、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を用いたリンパ球混合試験の実施においても、PBMCのラベリングやMSCとの混合比率の条件検討に時間を要した。PBMCは増殖しないことから、解析の都度購入する必要があるため、条件検討を慎重に行った結果、R3年度中に最適な条件を確立できたことから、次年度にPBMCを購入し、網羅的に解析を実施する予定である。
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