研究課題/領域番号 |
20K12713
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研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
上原 一剛 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10324998)
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研究分担者 |
大林 徹也 鳥取大学, 研究推進機構, 准教授 (80348804)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医療機器 / 熱設計 |
研究実績の概要 |
本研究は,医療機器を対象とした熱設計法や熱設計指針の構築を目的に,医療機器の熱問題の学術的な展開を目指すものである.2020年度に選定した医療機器やその関連機器について,それらの温度分布を把握する定量的な調査を継続して実施し,検討中の熱設計法や熱設計指針のためのデータ取得や数値シミュレーション環境の構築を行なった.具体的には,(1) 医療現場で用いられる容器を対象とした潜熱蓄熱材料配置方法の検討,(2) 医療現場での使用状況下における温度評価法の基礎検討,(3) 熱設計法や熱設計指針を構築するための有限要素モデルの検討などを行った.(1)については,潜熱蓄熱材を配置した容器を試作し,様々な外気温環境でその容器内の温度特性を実験的に調べた.適切な潜熱蓄熱材料の選定および配置により,外気温の影響を受けにくい容器構造と潜熱蓄熱材料の配置を見出した.この方法を活用すれば,様々な温度環境下であっても検体の定温輸送に貢献できる.(2)については,軟性内視鏡スコープなどのように,体内に挿入して使用される医療デバイスにおいて,その照明に用いられるLEDを選定し,体腔内や体表面に近い環境下での温度評価法の検討を行った.(3)については,医療機器等の内部熱源熱量や放熱状況の推定を行うために,発熱を伴う医療機器の熱解析を目的とした数値シミュレーション環境を構築した.発熱源と放熱面を有する簡略化した有限要素モデルを試作し,構築した数値シミュレーション環境で熱解析の妥当性を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医療現場で用いられる容器を対象とした新たな潜熱蓄熱材料配置方法について,試作品を用いた温度測定実験結果からその有用性を明らかにした.適切な潜熱蓄熱材料の選定および配置により,外気温の影響を受けにくい容器構造と潜熱蓄熱材料の配置を見出した.また,医療現場での使用状況に近い環境下で,医療機器等の温度を測定する基礎検討を実施した.2021年度は,熱源として照明用LEDを選定し,体腔内や体表面に近い環境下で温度測定を実施する検討を行った.さらに,発熱を伴う医療機器の熱解析を目的とした数値シミュレーション環境を構築することができた.
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今後の研究の推進方策 |
医療現場での医療機器の使用環境や使用条件を調べた結果から,医療機器の熱問題に対する対策は,その機器の特性によって大きく異なることがわかってきた.体内挿入や体表への装着を目的とした医療機器で発熱を伴うものは,内部に熱を積極的に閉じ込めて効率的に排出する方法がよいのか,内部の温度分布を均一化する熱対策がよいのかについての指針が必要である.一方,検体の温度保持機能を必要とする機器は,検体温度を正確に測定する方法や温度分布均一化に対する検討が必要である.こららの問題の解決には,医療機器内部の熱流を正確に把握することがもっとも重要である.今後の研究は,数値シミュレーションを活用して医療機器内部の熱移動を明らかにして熱設計法および熱設計指針の構築に向けた取り組みを進める. まず,有限要素モデルを用いた熱解析シミュレーションの妥当性を,これまでに実施してきた実験結果との比較で検討し,数値シミュレーション環境や有限要素モデルの改善検討を行う.次に,この数値シミュレーション環境を活用し,潜熱蓄熱材料のモデル化検討を行なって,医療用容器を対象とした潜熱蓄熱材料の最適配置について検討する.発熱を伴う医療機器に対しては,発熱量,放熱状態の推定が可能かどうか検討し,医療機器内部の熱流に着目して熱設計法および熱設計指針の構築を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
発熱を伴う医療機器のモデルの製作,検体温度測定法の検討,温度分布均一化の検討などを実施するために必要な物品の選定やそれらの物品の納入に時間を要したために次年度使用が生じた.これらの検討項目は,次年度以降も継続予定であり,次年度使用額は,医療機器モデルの製作・材料費のほか,発熱部材,温度センサー,熱流センサー,示温材,潜熱蓄熱材料などの購入,数値シミュレーション環境改善のための物品購入に使用予定である.
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