研究課題/領域番号 |
20K12717
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
塚本 桂 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40731691)
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研究分担者 |
松丸 直樹 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (30597844)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベネフィット・リスク分析 / ワクチン / モデル / シミュレーション / HPV / DALY |
研究実績の概要 |
昨年度構築したヒトパピローマウイルス(HPV)感染症および関連状態、HPVワクチン接種にともなう副作用など、9つの健康状態からなり、各状態間を確率的に移行する数理モデル(マルコフモデル)の汎用性を検証するために、オーストラリアのデータを移入し、疫学データとの一致度を検証した。その結果、子宮頸がんからの死亡確率及び高度異形成からの無感染状態復帰確率が、一致度の増減に影響を及ぼすことを見出した。従って、本数理モデルは、各国の状況に応じて適切なパラメータを設定することで、今後のシミュレーションおよび一元的ベネフィット・リスク分析に利用可能なことが示唆された。 ワクチンを含む医薬品の有効性及び副反応・副作用報告における疾患・障害分類に応じて一元的に重みを付与できれば、一元的なベネフィット・リスク評価が可能となる。そこで、疾患網羅性が高い障害調整生存年(DALY)を用いて、副反応・副作用報告に用いられるMedDRA用語とのマッピング方法を検討した。マッピングにはDALY、MedDRAとも割り付けのある疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)に統合することとし、ICD-10の22章に集約して、各章の重みを算出した。ある疾患領域の患者数並びに死亡者数が疫学データとした明らかながん領域で男女比を算出して検証したところ、本法によって男女比1.5、疫学データでは1.2~1.4と、ある程度の一致を認めた。従って、本法によりICD-10の22章に集約することで,多くの疾患・障害をDLAY値(10万人あたりの重み)として評価できる可能性があると判断した(2022年3月に開催された日本薬学会第142年会において一般口頭発表を実施した、演題番号28G-am08)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政策評価に用いるマルコフモデルは、各国の状況に応じて一部のパラメータを変化させることで日本のみならず諸外国のシミュレーションが可能であることが判明し、諸外国間の比較により、より定量的な政策評価が可能となると考えられたこと。また、ワクチンのみならずMedDRAに準拠して副作用・副反応報告がなされる医薬品においても、DALYを用いることで有効性を含む様々な疾患・障害に対して一元的な重みを付与することが可能となる方法を考案し、学会発表を実施できたことから、概ね順調に進展していると評価した。 しかし、考案した方法では、一部のカテゴリに通常考えられるより高い重みが割り当てられる可能性があり、より現実に即した方法の改良が必要であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
オーストラリアの疫学データを入手し、マルコフモデルを用いて日豪のシミュレーションを実施して、政策比較を実施する。 DALYマッピングルールの見直しと、疫学データ等との検証を行って、一元的な重み付け手法の改良を行う。 研究の総括として、学術雑誌への論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により学会開催がオンラインとなり、旅費が全く発生しなかった。今後、オープンアクセス雑誌への投稿費用に活用する予定である。
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