サルコペニアの正確な評価を目的として、その診断基準である筋肉量の減少と筋力低下を半定量的に数値化することを試みた。診断は動作テストや握力などで実施されることが多いが、実生活では転倒や骨折等の影響が大きいと考えられるため、下肢筋力の代表として大腿直筋を対象として評価法を検討した。筋肉量減少の評価は超音波像を用いて評価した。検者が異なっても差異が少なくなるよう測定位置を正確に定め、探触子の触圧の影響を受けにくい周囲長での評価が最も適していると考えた。一方で筋力の評価指標は表面筋電図で実施した。筋電図はその放電量が筋出力と関連が深いことはすでに知られているが、本研究では負荷量を順次増加したときの変化量として考案した筋放電-負荷指数を用い、その測定法の精度向上に関する種々の実験を実施した。しかし実際には、covid19の感染状況が収まらず、当初の予定であった65歳以上の高齢者についての記録が叶わなかった。そこで筋力の低下を評価する代わりに筋力増強による指標の変化を捉えることを試みたが、急峻な筋力増強に至るトレーニングを定めることが困難であり、結果の分散が大きく明瞭な結果は得られなかった。その中で、年齢や運動歴、運動習慣などの要素で結果が大きく変化することは確認できた。さらに、電極位置や負荷の増加率、測定中の疲労の影響などの測定条件も結果に影響することが明らかになった。この結果を考慮して適切な補正を行うことで、正確な評価が可能になると思われる。今後実際に高齢者を対象とした測定の準備は整ったと考えている。
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