研究課題/領域番号 |
20K12722
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 嗣道 東京理科大学, 薬学部薬学科, 准教授 (50305950)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 副作用 / シグナル検出 / time-to-onset / 感度、特異度 |
研究実績の概要 |
本研究は、薬の投与開始からイベント(有害事象)発現までの時間(time-to-onset: TTO)の分布を指標とする新しい副作用シグナル検出の手法(TTO法)の意義を明らかにすることを目的とする。 2020年度は、日本の医薬品副作用データベース(JADER)を用いて以下の検討を行った。①TTO法の感度、特異度、陽性的中度を、7966組の薬-イベントの組み合わせを対象に明らかにした。また、②従来の不比例性分析 (disproportionality analyses: DPA)ではシグナルとして検出されないがTTO法ではシグナルとして検出されるイベントの割合を求めた。 その結果、TTO法は、DPAに比べて感度は低いが特異度は高いという特徴があることが示された。さらに、DPAとTTO法の両方でシグナルとなった例は特異度がさらに高くなり、真の副作用である可能性が高いと考えられた。また、DPAではシグナルとして検出されないがTTO法ではシグナルとして検出されるイベントの割合は約13%であり、DPAまたはTTO法のいずれかでシグナル検出されたものをシグナルとすることにより、DPAにTTO法を併用することにより、DPAのみより感度の高いシグナル検出が可能になることが示された。 以上より、DPAによるシグナル検出に加えてTTO法を補完的に用いることにより、DPAでは検出されない副作用のシグナル検出につながり得ることが示された。 以上の成果について、2021年8月にオンライン開催される国際薬剤疫学会(ICPE 2021 All Access)でのポスター発表を申し込み、演題が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に予定していた、①TTO法およびDPAの感度、特異度、陽性的中度を明らかにすること、および②従来のDPAではシグナルとして検出されないがTTO法ではシグナルとして検出されるイベントの割合を求めることができたことから、本研究課題は順調に進展している。 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、発表を予定していた学会が中止となったため、2020年度中に学会発表を行うことはできなかったが、研究成果を2021年度開催の国際学会で発表できることとなった。この成果を近く英文論文としてまとめ、投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画に沿って研究を進める予定である。2021年度は、TTO法によりシグナルとして検出された薬-イベントのTTO中央値をその他全ての薬のTTO中央値と比較し、当該の薬-イベントのTTO中央値が他より長いためにシグナルとして検出された場合、および逆に薬-イベントのTTO中央値が他より短いためにシグナルとして検出された場合に分けて、TTO法の感度、特異度、陽性的中度を明らかにする予定である。 また、2021~2022年度は、その結果を①薬効分類別、および②疾病分類別に整理してまとめる予定である。すなわち、TTO中央値が他の薬剤より短いまたは長いことによりシグナルとして検出された薬-イベントの特徴について、薬を使用する期間の長短および副作用のタイプ(アレルギー性、遅発性など)の両方の観点から検討する。 これらの結果を国内学会、国際学会で発表するとともに論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、学会発表を予定していた学会が中止となり、旅費、参加費、およびポスター印刷費の支出が生じなかった。また、学生アルバイトについても、感染予防の観点から依頼できず、次年度に繰り越しとなった。 2021年度は、国際学会(オンライン開催)での発表が決定しており、参加費(約10万円)を支出する予定である。国内学会での発表も行う予定であり、旅費および参加費(約8万円)を支出する予定である。また、研究成果を英文論文として投稿・発表するための、英文校閲料、掲載料(合わせて約25万円)を支出する予定である。学生アルバイトについては依頼可能であり、繰り越し分と合わせて約28万円を支出する予定である。
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