本研究は免疫担当細胞である白血球に着目し,ヒト血液を用いた遺伝子発現解析により疼痛管理における血液トランスクリプトーム解析による高精度な評価系の確立を目的とし,マウスを用いた基礎実験を行った。まずマウスの血液から白血球を分離するための条件検討および白血球のシングル・セル化の検討を行った。血液には白血球と赤血球のほかに血小板が存在し,この血小板が白血球のシングル・セル化の障害となる。本研究では,輸送による検体の劣化を防ぐことを目的として血液を細胞保存試薬と混和し,この血液を用いて赤血球凝集試薬,密度勾配分離試薬および溶血試薬による白血球の分離を試みた。細胞保存試薬と混和した血液は,赤血球凝集試薬で赤血球は凝集せず,密度勾配分離試薬では凝集の様相を呈し,また沈降せず,白血球と分離することができなかった。一方、溶血試薬においては白血球を分離することができた。 ある種のポリフェノールは炎症性疼痛を緩和する作用が期待されている。われわれが日常的に摂取している食品非栄養成分であるポリフェノール類がマウスにおいて外科的処置のよる疼痛にもたらす効果を評価するための投与実験を実施した。これらのサンプルを用いてシングル・セル化とトランスクリプトーム解析を試みた。シングルセル化では対照群と試験群の細胞を異なるラベルで標識し,ひとつのレーンに2群を合わせて流した。結果,シングル・セルと良質なcDNAは得られたものの,トランスクリプトーム解析において,対照群と試験群の2群を分離して比較することができず,評価することができなかった。
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