研究課題
近年開発が進むアンチセンス医薬品に特有の有害事象の1つである自然免疫活性化は、これまでToll様受容体9(TLR9)を介すると考えられてきた。しかし、既存のTLR9活性化を指標とした試験をクリアしているにも関わらず、複数の開発品が臨床試験で自然免疫活性化が認められるケースが認められている。これを踏まえ我々は、アンチセンスを認識するTLR9非依存的な経路が存在し、自然免疫系の活性化に寄与していることを立証した。本研究ではアンチセンスによるTLR9非依存的経路を介した自然免疫活性化の機序を解明し、TLR9非依存的な自然免疫活性化の評価法を構築することを目的とする。「アンチセンスによるTLR9非依存的経路を介した自然免疫活性化の機序において中心を担う分子は何か」を本研究課題の核心をなす学術的「問い」とし、これまで独自に見出したTLR9非依存的な経路を介して自然免疫系を活性化させるアンチセンスを駆使してこの点を明らかにし、当該経路に特化した評価法を構築する。本年度は、近年開発されているアンチセンス医薬品の塩基長を考慮し、20塩基長以下のアンチセンスモデルを設計した。これらのモデルアンチセンスについて、構築を進めている本評価系を用いて自然免疫活性化を評価した。その結果、当該経路を活性化するアンチセンス配列を複数見出すことに成功し、本評価系の妥当性を示した。また、自然免疫活性化についてヒトとマウスの種差を明確化し、ヒト細胞を用いた評価系の必要性を示した。
2: おおむね順調に進展している
上述したとおり、当該年度はTLR9非依存経路を介した自然免疫活性化を誘導するアンチセンスを複数見出し、本評価系の妥当性を示した。現在、アンチセンスによるTLR9非依存経路を介した自然免疫活性化の評価指標の候補となる複数種類のサイトカインの上流分子を調べることで、アンチセンスの認識のKeyとなる受容体の絞り込みを進めている。
当初の計画通りアンチセンスを認識する核酸認識受容体の同定を進める。評価指標となるサイトカインの選定するための解析で用いたヒト末梢血単核細胞は、単球、樹状細胞など様々な免疫系細胞で構成されている。これまでの検証で、同定したサイトカイン産生の中心を担う責任細胞種を選別している。今後は、同定した細胞種の培養細胞株等を用いて、サイトカイン産生における核酸認識受容体の寄与を解析し、アンチセンスを認識する核酸認識受容体を同定する。
本年度実施した解析については、当初予定した費用内で実施することができたため、わずかではあるが次年度使用額が生じた。次年度使用額については、2021年度に実施する検証の試薬類等に使用する予定である。
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