研究課題/領域番号 |
20K12728
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中林 美奈子 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (30293286)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フレイル予防 / 歩行支援ツール / 中山間地域 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、コミュニティアクションリサーチの手法を用いて、住民・自治体・企業・研究者が協働で「スマートカート」と名付ける歩行支援ツール(電動歩行補助車)の開発とその活用を基軸としたフレイル予防活動を実施し、中山間地域の限界集落におけるフレイル予防のための地域活動モデルを示すことである。 令和2年度は、 (1)選定したフィールド地区において、大学関係者・地区住民代表・企業関係者でプロジェクトチームを結成し、研究の主旨やビジョンを共有した。 (2)X地区の65歳以上全員を対象に記名式自記式質問紙調査を実施し(回答率97.3%)、高齢者のフレイル出現率と生活の実態を調べた。フレイル高齢者の出現率は37.3%であり、フレイル群は非フレイル群に比べて主観的健康感が低い者、歩行能力が低い者、高齢者サロンに参加していない者が多かった。対象高齢者の移動手段をみると、自家用車を使用している者が半数以上を占め、歩行支援ツールの使用率はシルバーカーが4.0%、杖が14.3%と低い状況にあった。1日の平均歩数も3000歩程度であった。本結果より、足腰が少し弱った高齢者が斜面地の多い里山で“歩いて暮らす”ためには、高齢者自身の運動機能の維持・向上に加えて、斜面地で活用可能な歩行支援ツールの開発、地区全体で高齢者の“歩いてお出かけ”を歓迎する雰囲気づくり、歩いて出かける場づくり等の必要性が示唆された。今年度調査は次年度以降に実施する介入(アクション)のベースライン調査として位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、スマートカート開発のための基礎調査として、日常的にシルバーカーを使用しているフレイル高齢者を対象に電動アシスト付き歩行補助車を用いた歩行実験を行う予定であったが、シルバーカー利用者が想定外に少なく、実施条件に合致する対象選定が難航し、実施に至らなかった。 また、住民参加型ワークショップ(地区住民に集まってもらい、健康調査や歩行実験の結果を基に、①高齢者の外出や交流に関する地区の強みや弱みの抽出、②フレイル予防のための具体策と役割の検討を行う)を開催する予定であったが、新型コロナ感染拡大により、集う場を持つことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
X地区65歳以上全員を対象に、2020年度と同様の記名式自記式質問紙調査を実施し、フレイル出現率や生活実態の変化を観察する。2021年度は質問項目に「歩くことに関する意識」について聞く項目を追加する予定である。 また、スマートカート開発のための基礎調査については、歩行実験対象者の候補をシルバーカー利用者の他にセニアカー利用者、杖利用者にまで広げて選定・実施し、スマートカート開発のためのブレストに繋げる。 さらに、住民参加型ワークショップについては、新型コロナ感染の状況を見ながら、地区住民代表メンバーと集合の方式や参加人数を検討し、実施可能なやり方で実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィールド地区に出向いてプロジェクト会議を複数回開催する予定にしていたが、新型コロナ感染拡大防止のため特に県外大学関係者・県外企業関係者が出張できない状況になり、計上していた旅費を執行できなかった。また、歩行実験が実施できなかったため、電動アシスト付き歩行補助車と脈拍機能付きGPS腕時計の購入を2021年度に回した。さらにワークショップ未実施に伴い、事業費が執行できなかった。 次年度使用額は、65歳以上地域高齢者全員を対象にしたアンケート調査の調査費、フィールド地区で実施するプロジェクト会議やワークショップの開催費ならびに参加に伴う旅費(研究協力者分含む)、歩行実験に使用する電動アシスト付き歩行補助車や脈拍機能付きGPS腕時計の購入に使用する予定である。
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