研究課題/領域番号 |
20K12732
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
大浦 紀彦 杏林大学, 医学部, 教授 (40322424)
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研究分担者 |
飯坂 真司 淑徳大学, 看護栄養学部, 准教授 (40709630)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工知能 / AI / 創傷評価 / 畳み込みニューラルネットワーク / 難治性創傷 |
研究実績の概要 |
近年、褥瘡・糖尿病性足潰瘍などの難治性創傷の患者数が増加している。難治性創傷治療においては治療方針を決定するために創傷評価する必要がある。一般的に創傷評価は写真を用いて過去の状態と比較し、増悪しているか、治癒傾向かを判断する。しかし創傷評価は、創傷の専門家以外には困難な作業で、実際には創傷観察から得られる情報と血液検査データから得られる情報を組み合わせて、創傷の状態を経時的な変化の中で判断していた。そこで、本研究では、創傷専門家以外の一般人も使用可能な、創傷治療のための「AI(Artificial Intelligence)を応用し自動的に客観的な創傷評価法を行うシステムの開発」をめざす。褥瘡・糖尿病性潰瘍・静脈性潰瘍などの代表的な難治性創傷の様々な創傷治癒過程の時期の写真データのライブラリを作成する。それを2名の形成外科医が判断をし組織学的に、①創傷、②肉芽組織、③壊死組織、④上皮化、⑤周囲皮膚の炎症(発赤)、⑥正常皮膚画像データを分離した教師データを作成する。それをCNNを用いて学習させ、創傷評価を自動的に行うシステムを開発する。 特に、現在、創傷評価する方法がなく、このようなシステムの開発が待たれている 一般病院/在宅褥瘡/遠隔医療における創傷治療や、レギュラトリーサイエンス(RS)の領域で、客観的な評価が行うことができるシステムを構築する。 このシステムを汎用化し、最終的には写真データ、血液データ、患者の状態を入力するだけで、創傷評価できるアプリを開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が行ってきた「convolutional neural network(CNN)を使用して創傷と健常組織の分離を正確に行うモデルの開発」の研究を発展させた。現在、AI技術を使って創傷と健常皮膚を分離し、さらには病理学的に意義がある①創傷、②肉芽組織、③壊死組織、などについて評価できるモデルを開発した。 1.創傷のイメージデータを、もとに2名の形成外科医が創傷、肉芽、壊死組織、上皮化、炎症(発赤)、正常皮膚について病理学的に画像を分離した精度の高い教師データを作製した。この画像データを学習用イメージと推論用イメージに分けて実験した。 2.昨年の研究で、4種類のArchitectureで比較検討し、U-Netを用いることで良好な成績を獲得できることを確認した。このU-Netに教師データを読み込ませ、ことこの学習させた。学習したU-Net CNNを使用し、残りの40の画像データによって正確に領域を自動的に分離した精度を評価した。 3.学習したコンピュータが認識した領域と形成外科医の解答と比較した診断精度はROC 0.99924, 感度 0.978321, 特異度 0.993100 であった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、研究代表者が行ってきた「convolutional neural network(CNN)を使用して①創傷、②肉芽組織、③壊死組織、④正常皮膚の分離に加えて⑤炎症による発赤、を正確に行うモデルの開発」の研究を発展させ、創傷のイメージデータを、もとに形成外科医が創傷、肉芽、壊死組織、上皮化、炎症(発赤)、正常皮膚について病理学的に分離した教師データを作製しCNNに学習させ、創傷評価モデルを構築する。その後新しい創傷の画像データでテストし、形成外科医の評価と一致しているかどうかを判別する。成績が悪ければ、Augmentation dataを使ってより良いモデルを構築する。ROC曲線で95%以上の感度・特異度をめざす。炎症は客観的な評価が困難であるため、CNNで行う意義は大きいと考えられる。この段階での学会発表などの公表をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
Archiecture構築用のPCを購入を予定していたが、妥当なものがなく、現在使用しているPCをそのまま使用しため、今年度のPC購入を見送った。
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