研究課題/領域番号 |
20K12733
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
泉 隆 東海大学, 基盤工学部, 教授 (80193374)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 起立姿勢バランス / 振動触覚情報 / バランストレーニング / 転倒予防 |
研究実績の概要 |
本研究は、健康高齢者や障がい者の転倒訓練および歩行補助を目的として、バランス維持に必要な情報を振動感覚によって与えることによりバランス訓練効果を向上させるとともにバランスが崩れそうになったときに振動感覚で危険な状態を本人に注意喚起することにより、転倒を未然に防ぐための装置開発研究の一環として行われています。本研究で提案する装置は、使用者の起立時の重心の位置を測定する床反力計を改良した重心動揺計測部とバランスが崩れそうな事態が生じると身体各部に配置した小型振動モータで振動刺激を提示する振動刺激部からなります。バランス維持に必要な感覚情報を振動刺激を通じて増強して与えることにより、バランス訓練効果を向上させると共にバランスが崩れそうになったときに振動刺激で危険な状態を本人に注意喚起することにより、転倒を未然に防ぐ装置開発研究として取り組んでいます。 2021年度は、前年度からのCOVID-19の感染拡大に対応するため、研究代表者が所属する研究機関では、本務である教育と運営の労働負担が増大した状態が継続したことから、本研究課題に注ぐエフォートを十分に確保することが困難な状況になりました。従って、当初予定していた研究項目について直接的な成果を得ることはできませんでした。他方で、2022年度に向けて本研究計画を着実に実施するための準備に取り組みました。従って、2021年度に実施を予定していた研究内容については2022年度に繰り越して実施することを計画しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は、前年度からのCOVID-19の感染拡大に対応するため、研究代表者が所属する機関においては、在籍者の健康確認・遠隔通信による授業の準備と実施・受講者の指導など、本務である教育と運営の労働負担が増大した状態が継続しました。このような未曾有の状況下において、本務の方に多くのエフォートを傾注することとなり、結果として本研究を遂行するためのエフォート(当初の計画では20%)はほぼゼロにならざるを得ませんでした。 従って、本研究の開発項目として掲げた、(a)起立・歩行時の姿勢変化を検出し姿勢の安定性を評価する手段の開発、および、(b)触覚フィードバック情報を提示して姿勢バランスを変化させる手段の開発、のいずれについても特段の成果を得ることはできませんでした。 しかしながら、このような困難が継続する状況において、バランスとレーニングを行う人が姿勢動揺の状態を把握する手掛かりとして、重心動揺の大きさと方向に関する情報提示の重要度を実験的に確かめるために用いるソフトウエアを開発する環境の整備を行い、また、頭部に情報提示を行うデバイスの試作を行い、2022年度の研究活動に備えることができました。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、前年度までに実施を予定していた研究内容を改めて取り上げて実施する予定です。学生など若年被験者の協力を得て、重心動揺等のデータを計測し、感覚フィードバックのための基本的なパラメータを明らかにしたいと思います。また、2021年度に予定していた高齢者を対象とする実験についても、実施が可能かどうか検討する計画です。 (a)起立・歩行時の姿勢変化を検出し姿勢の安定性を評価する手段の開発 転倒時などの姿勢変化の検出手段として接触型センサや加速度センサなどを組み合わせて用いる方法を提案します。センサには小型で堅牢なものを用いて、頭部・胸郭・腰部などの位置や傾斜を測定する工夫を行います。提案方法を用いて得られる姿勢変化に関連するデータと、実験室の床反力計や運動解析装置で測定する参照データを比較対照することで、提案方法によってどの程度正確に重心動揺を推定できるか、姿勢の安定性評価に用いることが許される条件や適用の限界などについて知見を得る計画です。 (b)触覚フィードバック情報を提示して姿勢バランスを変化させる手段の開発 転倒を回避するために適切な姿勢変化を促す触覚情報を被験者に提示する感覚フィードバックを行う方法として、複数個の小型振動モータ等の触覚提示装置を利用する方法を提案します。装置を試作して、姿勢動揺の状態を触覚情報として表現する方法を実験的に明らかにする計画です。例えば、姿勢が安定な時には情報を与えず、不安定な状態に近づくと注意喚起の触覚情報を提示する方法が考えられます。また、重心動揺の水平面内の方向と大きさを表現するため、触覚情報を常時提示する方法も考えられます。このように、姿勢の状態を伝える触覚情報の表現方法は一通りではないことから、認知課題や遂行課題などの応用場面を設定して適切なものを見出す計画です。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、前年度から続くCOVID-19の感染拡大に対応するため、所属機関における本務が多忙となり、本研究を計画どおりに執行することは困難となりました。本務に多くのエフォートを傾注することとなり、本研究を遂行するためのエフォート(当初の計画では20%)はほぼゼロとなりました。以上が「次年度使用額(B-A)]が生じた理由となります。しかしながら、このような状況において、重心動揺の大きさと方向に関する情報呈示の重要度を実験的に確かめるために用いるソフトウエアを開発する環境の整備を行うなど、2022年度の研究活動に備えています。 2022年度はCOVID-19の感染がやっと収束の兆しを見せ始めている様子ですが、前年度に計画していた内容と本年度に実施を予定している内容を適宜調整し、無理のない形で積極的に研究活動を推進して行きたいと考えています。
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