目的:運動麻痺が残存する脳卒中患者の歩行再建のゴールは、健常者が行う歩容と同一ではなく、麻痺状態に最適化された代償を含む新しい歩行様式である。麻痺肢立脚の再建には、装具が有効で、さらに近年歩行練習ロボット用いることで、より複雑な運動の制御と練習が可能になった。しかし、麻痺肢遊脚時の足先クリアランスの再建には、何らかの代償動作が必須で、どの様な代償方略が良いのか十分なコンセンサスがない。本年度実施のphase3の目的は、健常者を対象に通常歩行と脳卒中片麻痺者患者に観察される3つの遊脚期代償方略模倣し酸素摂取量に違いがあるのかを、比較検討することである。 対象と方法:健常成人ボランティア20名(男性: 10名、女性: 10名、身長: 166±8.1cm、体重: 57.3±9.3kg、BMI: 20.6±2.3、年齢: 24.3±1.4歳)であった。方法は、対象者に膝装具を装着しない通常歩行、膝装具を左膝に装着し、左(模擬的に麻痺側)下肢の短縮不全を設定した非装着側伸び上がり代償歩行、装着側外転代償歩行、装着側骨盤挙上代償歩行の計4種類の10m歩行時間と歩数を計測し、快適歩行時の速度、歩調を算出した。その後、トレッドミル上を10m歩行で計測した最も遅い速度、最も低いケイデンスで4種類の歩行を行い、その際の酸素摂取量体重比を呼気ガス分析装置を用いて計測した。 結果:酸素摂取量体重比(ml/kg/min)は、通常歩行7.9±0.1、非装着側伸び上がり代償歩行10.9±0.2、装着側外転代償歩行9.5±0.1、装着側骨盤挙上代償11.9±0.1であり、遊脚時代償の3種類の代償方略では、酸素摂取量の少ない順に、麻痺側外転代償歩行、非麻痺側伸び上がり代償歩行、麻痺側骨盤挙上歩行の順になった。
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