研究課題/領域番号 |
20K12737
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宮脇 和人 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00390906)
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研究分担者 |
島田 洋一 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (90162685)
齊藤 亜由子 工学院大学, 先進工学部, 助教 (90710715)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 歩行器 |
研究実績の概要 |
本年度の研究課題 「高齢者のフレイル予防を目的とした雪中歩行用の転倒予知機能付きソリ型歩行器の開発」である。 高齢者の健康寿命を延ばすためにはフレイルの予防が有効である。フレイルとは要介護と健康の間の状態であり、加齢に伴う機能低下による「要介護の予備群」状態を指し、放置すると転倒、要介護、死亡などにつながるが、運動や栄養などにより、健康状態に戻ることができる。このフレイルは運動することで予防可能となる。しかし、北国の冬は長く雪に閉ざされているため、屋外で運動することをためらう高齢者が多く、運動不足が雪国特有の課題である。本研究は北国の雪深い冬でも利用できるように車輪部をソリ型とし、駆動部はクローラを用いたソリ型の電動歩行器を開発する。秋田県の65歳以上の割合を示す高齢化率は37.1%と過去最高を更新し、全国1位の高齢者県である。【令和元年度:秋田県老人月間関係資料】秋田県など東北地域の冬季は雪に閉ざされることが多く外での運動はほとんどできない。そのためこの機器の開発場所は雪が降り積もる秋田県が最適である。 次に、試作したソリ型の電動歩行器がユーザにどの程度の効果があるかその有効性を示す必要があると考えられる。そこで、試作したソリ型の電動歩行器をユーザが利用し、その有効性をモデルベースシミュレーション技術により評価する。モーションキャプチャシステム(Vicon)を利用した生体情報計測技術と、下肢運動に重要となる筋骨格モデルを利用したモデルベースシミュレーション技術により利用者の各関節や筋肉にどのような力が発生しているかを評価してソリ型の電動歩行器の有効性を定量的に示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は東北地区や北海道などで主に高齢者が冬でもフレイルの予防ができる歩行機の開発のため、1次試作として雪道を想定し、地面と接地する部分にそりを搭載した手動式(手押しタイプ)のそり型歩行器を開発した。材料はアルミで、そり部分はプラスチック、寸法は横幅630mm、高さ890mm、奥行き640mmとなっている。この試作機をユーザが利用したときにユーザにどのような効果があるかを定量的に評価するために、モーションキャプチャー装置(赤外線カメラ8台のシステム)と2台の床反力計を同期させた評価システムを用い、ユーザの歩行器を利用した歩行動作を測定した。本システムを利用して通常歩行、車輪型歩行器、そり型歩行機を用いた歩行を測定したところ、2つの歩行機を用いた歩行は通常歩行に比べて重心が下がっていることが分かり、重心位置の上下変動幅も通常歩行が約30mmに対し、そり型、車輪型歩行器は約10mmであり、2つの歩行器を用いた歩行の方が小さくなっているなど歩行器の効果が示された。重心変動、足部の床反力や足関節・膝関節・股関節などの下肢のモーメントに関しても、今回開発したそり型歩行器では、重心位置の変動幅が小さくなり、床反力も小さくなった。以上から、高齢者でも無理なく安全に使用でき、十分に有用性があると考えられた。この知見を元に外観寸法を決定し、クローラ型の電動アクチュエータを搭載した電動そり型歩行器を試作した。クローラ部は12V DCモータを2個搭載しArduino328 互換ボードにソフトウェアーを書き込むことで動作することができる。このクローラ部の両サイドにプラスチック製のソリが搭載されており雪上での歩行補助を行う。以上のように今年度は概ね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにソリを搭載した手動式歩行器と電動式歩行器を製作した。今後はソリ型電動歩行器のコントロール手法として、距離センサを用いてソリ型歩行器と利用者の距離を保ちながら歩行補助を行うシステムを構築する。ソリ型歩行器とユーザの距離が近づきすぎるとソリ型歩行器の動作スピードを増速し、離れすぎるとソリ型歩行器の動作スピードを減速させる動作プログラムとする。ここで、ソリ型歩行器とユーザとの距離が離れすぎるタイミングやユーザの足部の位置を検知することで、不安定な歩行になった場合を転倒予知ととらえてソリ型歩行器の動作プログラム開発を行う。 新しく開発したソリ型電動式歩行器をユーザが利用した場合、そのユーザにとってソリ型電動式歩行器が有効かどうかを定量的に評価する必要がある。そこで、筋骨格モデルシミュレーション技術を用い、開発したソリ型電動歩行器を利用したときの利用者への効果を定量的に評価する。通常この手法はモーションキャプチャシステムを利用するため、屋内での実験となる。そこで、可搬式のモーションキャプチャシステムと、安価で高精度なセンサとして注目されているIMUセンサを用いて、屋外の雪道において歩行動作を計測する測定システムを新しく構築し、開発したソリ型電動歩行器がどれぐらいユーザに役立つのかを定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:本年度に開催予定されていた機械学会年次大会、講演会等がリモート開催となったので旅費に未使用額が生じました。また、本年度開催予定の国際学会MHS2020( International Symposium on Micro-NanoMehatronics and Human Science )が基調講演だけの開催となったので旅費、その他に未使用額が生じました。 歩行実験に利用した床反力を測定するセンサが、すでに導入済みのセンサの取り付け治具を変更することで利用可能であったので物品費に未使用額が生じました。 使用計画:次年度の成果発表、技術調査の旅費および、歩行実験で利用する計測用マーカなどを物品費として使用する予定です。
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