現在の社会において高齢者の健康寿命を延ばすためにはフレイルの予防が有効である。フレイルとは要介護と健康の間の状態であり、加齢に伴う機能低下による「要介護の予備群」状態を指し、放置すると転倒、要介護、死亡などにつながるが、運動や栄養などにより、健康状態に戻ることができる。このフレイルは運動することで予防可能となる。しかし、北国の冬は長く雪に閉ざされているため、屋外で運動することをためらう高齢者が多く、運動不足が雪国特有の課題である。本研究は北国の雪深い冬でも利用できるように車輪部をソリ型とし、駆動部はクローラを用いたソリ型の電動歩行器を開発する。秋田県の65歳以上の割合を示す高齢化率は38.5%と過去最高を更新し、全国1位の高齢者県である。【令和3年7月1日現在】加齢に伴い骨や関節、筋肉などの運動器の衰えが原因で「立つ」「歩く」「座る」といった機能が低下している高齢者が多くなってきており、フレイルに該当する患者が増加している。適度な歩行はフレイル予防のひとつであるが、東北地方や北海道などの積雪地域では、歩行機を使う高齢者の歩行が困難である。秋田県など東北地域の冬季は雪に閉ざされることが多く外での運動はほとんどできない。そのためこの機器の開発場所は雪が降り積もる秋田県が最適である。 試作した手動と電動の2種類のソリ型歩行器をユーザが利用し、その有効性をモデルベースシミュレーション技術により評価する。カメラ8台のモーションキャプチャシステム(Vicon)と2枚の床反力計を組み合わせた三次元動作解析装置を用いて歩行の様子を生息するとともに、下肢運動に重要となる筋骨格モデルを利用したモデルベースシミュレーション技術により利用者の各関節や筋肉にどのような力が発生しているかを評価してソリ型歩行器の有効性を定量的に示した。
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