研究課題/領域番号 |
20K12742
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
浅野 裕俊 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (70453488)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生理心理評価 / 鼻部皮膚温度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、不随意機能を対象者が自覚することなく制御・調整する無意識下生体制御の基盤技術開発である。不規則な生活習慣や過度なストレスは不随意機能を正常な状態から逸脱させ、不眠症や自律神経失調などの症状を引き起こす。特に睡眠不足による一時的な覚醒度の低下は、病気や交通事故の原因となり得る。本研究は体温を制御・調整する方法論の確立を目指しており、日中活動時の睡眠介入効果を生理量から適切に評価するために鼻部周辺領域の皮膚温度を顔面熱画像から非接触で検出する技術を開発した。鼻部皮膚温度は、交感神経活動と関連性の深く関係しており、睡眠介入効果を測定機器装着による精神的負荷をかけることなく効果的に評価・分析するために重要である。顔面熱画像から顔領域および鼻部領域を特定する検出モデルをYOLOv3モデルとカスケード分類器を用いて精度を評価した結果、角度の変化が大きい撮影条件下では検出率が低下するものの距離による検出率の変化は見られず、カスケード分類器よりも距離に対応した検出ができることがわかった。一方で、鼻部領域における誤検出率を防ぎ、精度の向上を行うための対策として、正面熱画像に加えて角度の変化を持たせた熱画像を学習データとして与えていくこと、ならびに実験において光環境などの変化も考慮していく必要があることもわかった。また、顔面熱画像から鼻部周辺領域を高精度に検出するためには大量の学習データが必要であることもわかってきた。当該検知モデルの精度を向上させるための教師データとして大量の熱画像を用意するために、敵対的生成ネットワークを用いて生成の可能性を検証した結果、擬似熱画像生成できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度途中による異動によって研究の遂行に遅延が起きる可能性があったが、概ね順調に進んでいる。生理心理計測実験で被験者の交感神経活動状態を評価するため、鼻部周辺領域を検出するモデルの開発を継続するとともに、年度計画に従い、生理心理計測実験を通じて有彩色光の半値幅とピーク波長と色印象に関する光暴露条件を再検討し、試作システムに許容範囲を反映させていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
日中活動時の睡眠変動に深く関わるといわれている体温調節機序にどのように作用しているのかについて調査するため、交感神経活動を反映する顔面熱画像から非接触で鼻部周辺領域を検出する技術を開発したが、現行モデルは撮影角度が大きい条件下では鼻部周辺領域の検出率が低下してしまうため、より高い精度で頑健なモデルを作成する必要がある。また、生理心理計測実験から、同じ色印象を有する光でも、狭帯域と広帯域を持つ光によって睡眠変動と深く関わる皮膚温度変化を調整できる可能性がみえてきたが、睡眠変動に関わる睡眠ステージや呼吸変化、覚醒反応などの評価はまだ不十分である。有彩色光暴露条件と体温と睡眠変動に関する詳細な生体メカニズムを解明するためにも生理心理計測実験を継続していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際会議発表ができなくなったこと、また学術論文査読が想定よりも長く、本年度に間に合わなかったことが要因である。
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