研究課題/領域番号 |
20K12742
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
浅野 裕俊 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (70453488)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鼻部皮膚温度 / 機械学習 / 覚醒度推定 / 狭帯域光 / 広帯域光 |
研究実績の概要 |
睡眠不足は、死亡率や罹患率の上昇、生命を脅かす重傷、交通事故など、健康や安全に重大な影響を及ぼす。健康障害や怪我、事故などの危険から身を守るためには、睡眠サイクルを管理し、適切に調節する技術の開発が重要である。睡眠の質は、音や室温などの環境要因に影響されやすい。特に、光は概日リズムと同調し、睡眠導入効果のあるメラトニンを抑制するため、睡眠サイクルに大きな影響を与える。これまでの研究から、波長帯の異なる2つのLED照明が交感神経活動の亢進に異なる影響を与えることが示されており、室内のLED照明を調整することで、睡眠サイクルを適切に管理できる可能性を示唆していることから、鼻部皮膚温度特徴量からLED照射時の覚醒レベルを推定する技術を開発した。鼻腔は交感神経の活動が顕著に反映される部位であり、交感神経活動が活性化すると、鼻腔皮膚温に表れるといわれている。光照射時の覚醒度を予測できれば、鼻腔皮膚温を通じて作業者の睡眠サイクルを自動管理することができる可能性がある。本実験では広帯域光の帯域幅は50nm、狭帯域光の帯域幅は15nmの光源を使用した。光のピーク波長は632nmとし、眼球付近の照度は30lxに制御した。事前に色の印象に関するアンケートを実施し、波長帯の違いが色の印象に影響を与えないことを確認している。測定データは鼻部皮膚温度と主観的覚醒度である。当該実験を通じて得られたデータを用いて、CNNによる学習及び覚醒レベル推定精度に関する評価を実施した結果、狭帯域光の分類精度は広帯域光よりも高く、狭帯域光が眠気に関する特徴をより多く学習していること、また、狭帯域光が生理的な影響をより大きく受けていることが反映されていることが示された。当該研究及び関連研究は、学会発表や学術雑誌にて成果報告を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験結果から、鼻部皮膚温度特徴量からLED照射時の覚醒レベルを推定できる可能性を示しており、次年度の実験に向けて、本年度実施した実験結果を基に刺激部位や呈示条件、実験環境等についての足掛かりを得ることができたことから、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施した覚醒レベルの推定では、狭帯域光では全体の5%が未認識画像となり、広帯域光では全体の15%が未認識の画像であった。特に、広帯域光推定モデルの中間層は、局所的に学習された画像が多く存在しており、中間層の重みが過小に学習されていた可能性があることから、モデル改良の余地がある。今後は、当該モデルの改良を行うともに、本年度実施した実験結果を基に、部位刺激時の体温と皮膚表面温度と熱放散に関する生体機序の関係に基づく刺激部位と呈示条件を見直し、次年度のLED光源を含む実験環境や実験タスクについて検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施予定だった実験システムの構築に必要な物品を揃えられなかったことが要因である。
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